元日本代表・名良橋晃が振り返る現役時代。国立で行なわれたW杯予選、引き分け後の暴動に「いつ帰れるんだ」という恐怖も体験した (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

岩政監督は長い目で見てほしい

――今シーズンの鹿島についてもお聞きしますが、レネ・ヴァイラー新監督の体制で始まり、シーズン途中で岩政大樹監督に交代しました。今の鹿島についてはどのようにご覧になっていますか?

 石井正忠さんの頃から新しい監督を連れてきては解任し、監督がなかなか落ち着かない時期が続いていますよね。今回もヴァイラーさんを招聘して、新しい鹿島を作ろうという途中で、いろんなところを見たなかで岩政監督に舵を切ったと思います。

 彼は強い鹿島を知っているし、すごく理論的な監督です。もしかしたら躓くこともあるかもしれないですけど、短いスパンでの監督交代が続いているので、個人的には岩政監督は長い目で見てほしいと思っています。

――今シーズンの、ブラジルスタイルからヨーロッパスタイルへの変革はどのように感じていました?

 現代サッカーはあらゆる部分でスピードアップしていますし、いろんなチームがバージョンアップしているなかで、鹿島の常勝とか、勝負強さとか、そういうことでは勝てない時代になっている。そこで取り残されないための変化なわけですよね。

 昔の鹿島は自分たちありきでサッカーができたと思うんですけど、今は相手がいてどうサッカーを変化させるか。僕は岩政監督のことを「岩政大先生」と言っていますが、そこの引き出しをすごく持っているので、我慢強く、粘り強く、長い目で見てチーム作りをさせてあげてほしいです。絶対にいいチームにしてくれると思っています。

――岩政監督になって、今のチームはどのようにご覧になっていますか?

 鹿島は伝統的に4-4-2のシステムで戦ってきましたけど、岩政監督になって4-3-2-1とか、3バックにしたりとか、いい意味でこれまでの概念に変化をつけて、攻撃でも守備でも柔軟に対応してくれていると思います。

 それから選手のカラーをすごく引き出しているなと、見ていてすごく感じます。あとは選手をどう組み合わせていくか。コーチ陣も新たに外から連れてきて、また違った鹿島のサッカーが見られるんじゃないでしょうか。

――では最後に鹿島へのメッセージや、期待するところを聞かせてください。

 なかなか結果がついてきていませんけど、今はチームを作っている段階で、これからよくなっていくと見ていて感じます。川崎フロンターレにも横浜F・マリノスにも、苦しい時代があった上で今の強いチームがあると思うので、鹿島もこの産みの苦しみから逃げず、クラブ全体で成長していってほしいと、いちOB、いちサポーターとして願っています。

名良橋晃 
ならはし・あきら/1971年11月26日生まれ。千葉県千葉市出身。千葉英和高校からフジタ(現湘南ベルマーレ)に入り、その後のベルマーレ平塚で右サイドバックとして活躍。1997年からは鹿島アントラーズで10シーズンプレー。2007年に湘南ベルマーレに復帰し2008年に引退した。J1通算310試合出場23得点。日本代表ではAマッチ38試合出場。日本が本大会に初出場した1998年フランスW杯でプレーした。引退後は育成年代の指導や、解説者を務めている。

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