日本代表に再確認はあっても発見はなし。森保監督はW杯に向けてのムード醸成に失敗した (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 高須力●撮影 photo by Takasu Tsutomu

スタメンの総取っ替えには同意できない

 森保監督はこのエクアドル戦を前にこんなことを述べていた。

「一部の選手で積み上げてチーム力を上げるだけではなくて、2チーム分ぐらいの戦力がいるなかで、疲弊した選手を入れ替える。もっと言うと、1試合ずつ選手を入れ替えながら戦えるまで準備しておかないと、我々が目標としているベスト8以上を狙うことは難しい」

 最後の最後になって、急にこちらにスリ寄るようなことを言い出したわけだが、エクアドル戦というゲネプロを前にすると、話は変わってくる。その考えに、全面的に同意できなくなる。

 W杯本番で、試合ごとにスタメンを総取っ替えなどしないはずだ。1戦目、2戦目、3戦目......を戦うなかで、継続するものと、入れ替えるものとの比率に気を配りながら、グラデーションをかけるように漸次的に移行していく。これがW杯本大会で上を目指そうとするチームの、やりくりの仕方だ。求められるのは、フィールドプレーヤー全員をほぼ均等に使いこなす監督采配である。

 2チーム分がほしいからと、スタメンを総取っ替えする采配には同意しない。選考がフェアに遂行されていることをアピールする、アリバイ作りに見えてしまう。エクアドル戦の一番の目的である「強化試合」という側面は、その結果、霞むことになった。

 アメリカ戦、エクアドル戦を終え、新たな収穫はあっただろうか。やはり攻撃は鎌田大地を軸に考えるべし......等々、再確認させられたことはある。しかし発見はなかった。なにより新戦力を発見することができなかった。

 それは何人かのメンバーを切れずに、今回も招集してしまったことにある。柴崎岳、原口元気、長友佑都らが必要な戦力だと筆者は思わない。南野拓実の力が大きく落ちていることもわかっていたはずだ。見切りをつけるべき選手を相変わらず招集し、出場機会を与えれば、新たな枠は生まれない。いまこの時期、探し求めたいのは、チームを勢いづかせる上がり馬だ。森保監督は、フェアな選考をアピールする一方で、その努力を怠った。新戦力を試そうとしなかった。

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