カタールW杯日本代表のサプライズメンバーは? オールラウンダーなボランチ、20歳の藤田譲瑠チマは伸びしろ大 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

アピールに成功した選手は?

 ただし、いずれの活躍も驚きには値せず、インパクトには物足りなかった。対戦相手の実力を踏まえれば、想定内のパフォーマンスだった。

 とはいえ、個人的にはひとりだけ目についた選手がいる。今回のフィールドプレーヤーの中で最年少の藤田譲瑠チマ(横浜FM)である。

 パリ五輪世代のボランチは、前情報に乏しかったという点を差し引いても、驚きをもたらしてくれた選手だった。今大会では香港戦と韓国戦の2試合にスタメン出場。とりわけ韓国戦での落ち着きは、とても20歳とは思えないものだった。

 49分には正確なクロスで相馬の先制点をアシストし、72分の町野のゴールの起点にもなった。テンポよく正確にパスを入れられる能力こそ、藤田の持ち味と言えるだろう。

 また自信を持ってパスを受け、姿勢よくボールを運び、視野の広さを生かした展開力も見せつけた。一方で鋭い出足でパスカットを狙い、局面では粘り強く対応し、激しくボールを奪い取るシーンもあった。

 印象に残ったのは、終了間際のプレー。カウンターからボールを運び、走り込んだフリーの味方にラストパスを出すと思わせた瞬間、右足を強振。鋭い弾道は枠を外れたが、予想を裏切るプレーを選択したことに、サッカーセンスの高さが感じられた。

 奪って、運んで、さばいて、決定的なパスも出せる。まさにオールラウンダーなボランチは、プレー時間を刻んでいくなかで余裕すら感じさせていた。国内組主体とはいえ、すでにチームの中心としての存在感を放っていたのだ。

 今大会で替えがたい自信を手にした藤田は「今日できたことは、特に後半は自分のところでテンポを出すプレーだったり、得点に結びつくようなパスだったり、自分で持ち運んで、シュートは入らなかったですけど、ああいったボックストゥボックスの動きは多く出せたのかなと思います」と振り返る。

 一方で「奪いきれるところで奪いきれなかったり、攻撃では前に向ける時にバックパスをしてしまったところが直していくべきところかなと思います」と、反省も忘れなかった。

 それでも初のA代表で堂々たるプレーを見せつけたのだ。森保一監督の脳裏にも、そのパフォーマンスが深く刻まれたはずだ。

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