なでしこジャパンE−1連覇も、見えない突破口。W杯まであと1年で「試合を読むリーダー」は現れるか
なでしこジャパンがE-1選手権2連覇を達成した。最後の中国戦をスコアレスドローで優勝したことに複雑な表情を浮かべる選手たちに、池田太監督は「いろいろ課題はあるが、みんなでタイトルを獲るという成功体験は大事」と、素直に優勝を喜ぶよう、笑顔で選手たちを促していた。
積極的に仕掛けていき、しっかりと役割を果たした千葉玲海菜(左) 今大会はキャプテン熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)をはじめ、岩渕真奈(アーセナル)、長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド)ら主力メンバーを欠くなか、1月のAFC女子アジアカップで勝ち切れなかった韓国、中国との再戦ということで注目された。
この戦いでもっとも目を引いたのは、今大会で初スタメンを掴んだ千葉玲海菜(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)だった。
「貪欲」----千葉のプレーはこの言葉を体現している。本職はトップだが、優勝のかかった中国戦では右サイドハーフを任された。序盤からスピードあるドリブルで中へ仕掛けていく。しかし、彼女の強さは攻撃面でのスピードだけではない。例えば、ボールを追うなかでの1対1。ボールが奪われるかどうかが決まる瞬間、千葉には一伸びがある。堅守を誇る中国のDFに対しても何度もその一伸びでラインを割らせていた。
6月の欧州遠征で初ゴールをマークした際は、長谷川のアシストにも助けられたが、ゴール前で身体の面で押し込んだ。練習でふたりは同じグループやペアになることがなく、長谷川と初めて交わしたボールでスコアを生み出してみせた。今大会はチャイニーズ・タイペイ戦で、猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)からのコーナーキックを頭で仕留めた。あらゆる攻撃パターンでゴールに迫る千葉のプレーは、相手が変わってもその濃度が保たれている。国内では結果を残せても、国際試合となると途端に長所が発揮できなくなることが珍しくはないからこそ、目が向くのかもしれない。
特に最後の中国戦では、前線に植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)、井上綾香(大宮アルディージャVENTUS)と裏への抜け出しを得意とする同タイプのスピードアタッカーとの揃い踏みとなった。スペースを譲り合っても奪い合っても台無し。共存は難しいとの予想に反し、井上の鬼パスとも思える強烈な縦へのボールにも追いつくことができるのが千葉。こうなると一気にゴール前で優位に立ち、中へ折り返したところをすかさず植木がフィニッシュ。まだまだ荒々しいが、飛び出し好きの3人が揃っても十分に共存できた。しかも3人がそのスピードを持って前線からプレスをかけたことで、今大会初めて守備の形がハマった。ひとつの形としては"アリ"の戦い方だった。
千葉個人としては、フリーでこぼれ球をふかしてしまった場面もあり、決定力という課題が突きつけられたが、「ゴールを決めきる選手がワールドカップに選ばれる」とさらに闘志に火がついたようだ。その奮起に期待したい。
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