日本代表の懸案だった「ポスト長友」に新星登場。伊藤洋輝はW杯本番でも使えるか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 牛島寿人●撮影 photo by Ushijima Hisato

 だが、試合開始早々の6分、そして34分と、いずれも右から左へと大きくサイドチェンジされたタイミングを見逃さず、三笘を追い越してインナーラップを仕掛けた場面などは、とても"にわかサイドバック"とは思えない、見事な攻撃参加だった。

 伊藤の左サイドバック起用が、日本代表に望外の成果をもたらした。そう言ってもいいのかもしれない。

 とはいえ、今さらながらを承知で言えば、磐田時代から、その兆しがなかったわけでもない。

 磐田のアカデミーで育った伊藤は、元々はボランチ(2019年U-20ワールドカップにもボランチで出場している)ながら、トップチームではなかなかポジションをつかめず、3バックの左DFへとコンバートされていた。本人にしてみれば、不本意なところがあったのかもしれないが、時折見せる左サイドからのオーバーラップは思いのほかスムーズで、新たな居場所を見つけたばかりであることを感じさせなかった。

 加えて、配球センスに優れており、ボランチほどはプレッシャーを受けにくい最終ラインから放つ、精度の高いフィードは攻撃の起点となり得ていた。

 ただ当時は、守備面に課題があったことも確かだ。

 守りに回った時のスピードや強さに難があり、恵まれたサイズがむしろ鈍重な印象さえ与えていた。今後、DFで勝負していくには、そこがネックになるかにも思われた。

 しかし、ドイツへ渡り、そうした課題が飛躍的に改善された今、伊藤を左サイドバックの候補に加えない手はないだろう。

 パラグアイ戦での伊藤は、前半は左サイドバックで、後半は左センターバックでプレーしている。当然、左センターバックという選択肢も端から捨てる必要はないが、現在の日本代表が抱える人材と彼の能力を総合的に考えると、左サイドバックで生かしたい選手であることは間違いない。

 35歳のDF長友佑都の力に陰りが見えるなか、新たな候補者が"ポスト長友"に名乗りを上げたと言っていい。森保監督も試合後、次のような言葉で伊藤の活躍を称えている。

「A代表初招集で期する部分があったと思うが、ポテンシャルを示した。守備ではチーム(シュツットガルト)でやっているようにタイトにやり、高さも含めて、彼が持っている身体能力と戦う姿勢を出してくれた。攻撃でも起点になり、味方のボール保持者を助けるフリーランニングもしていて、非常にアグレッシブだった」

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