前田遼一が即決で選んだ自らの代表ベストゲーム。「体力も全部使い果たした感があった」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AP/AFLO

 その後も先発出場を続けた前田は、指揮官の期待に応えるように、3戦目のサウジアラビア戦では2ゴールを決め、5-0の完勝に貢献。チームも順当に勝ち上がり、続く準々決勝ではカタールを下し、ベスト4進出を決めた。

「チームとともに自分も成長していけたらいい」

 そんな思いで大会に臨んでいた前田は、パフォーマンスの波こそあれ、先発の座を譲ることなく、日本代表の最前線に立ち続けた。

 そして迎えた準決勝の韓国戦。2大会ぶりのアジア王座奪還に向け、最大のヤマ場とも言える試合は、前田にとっても実力が試される大一番だったと言っていい。

 試合は、「力的には両チーム五分五分の戦いでした」という前田の言葉どおり、立ち上がりから一進一退の攻防が繰り広げられた。

 ところが、日本は思わぬ失点を喫してしまう。前半23分、相手ロングボールに対応したセンターバックの今野泰幸がファールをとられ、韓国にPKを与えてしまったのである。

 試合の入りは悪くなかった。それだけに、日本にとっては嫌な失点だったはずだが、「正直、(自分が得点を)とれそうだとまで考えていたわけではなかったですけど、それまでの時間もいいイメージでプレーできているな、とは思っていました」と前田。

 試合の流れを引き戻す値千金の同点ゴールが決まるのは、36分のことだ。

「韓国に先制され、相手ペースに試合が傾きかけたところで、すごく大きなゴールをとれたと思います」

 左サイドで縦パスを受けた本田圭佑が、うまくタメを作って長友佑都のオーバーラップを促すと、本田からパスを受けた長友は、スピードに乗ってペナルティーエリア内に進入。マイナス方向へ短いクロスを送った。

 そこへ絶妙なタイミングで走り込み、ワンタッチで仕留めたのは前田である。

「左サイドでいい崩しがあって、自分はどこにスペースがあるかを考えながら動いていました。僕自身が空いているなと思ったところに、佑都もそれを感じてすばらしいタイミングでクロスを出してくれた。だからこそ、得点が生まれたと思うし、出し手と受け手の考えが一致したゴールでした」

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