久保建英に期待したい「偽9番」。ただし、森保監督に選手ありきの戦術がとれるとは思えない (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【森保監督の久保への評価は?】

「タケ(久保)が入って、自分はサイドで幅を作って、(久保が)自由に動けるように、と思ってプレーしていました」(伊東純也)

 久保によって、攻撃の予感は出ていた。

 敵陣で久保を中心にボールを出し入れし、守田英正がミドルを狙った。敵陣で守田が奪い返したボールを南野拓実がつなぎ、パスを受けた久保自身が左足でファーへフェイントを入れながらニアへシュート。左に開いた守田から受けたボール、久保は相手ディフェンスを外し、GKとDFの間に際どいクロスを入れている。

 2失点した中国の足が止まっていたのはあったが、久保はピッチに入ってすぐに適応し、20分足らずで多くのチャンスを作り出した。

 しかし攻撃が活性化した一方、チームとして守備のソリッドさは低下していた。自陣まで入り込まれてしまう機会も増えてしまった。FKから二度、危うい場面を作られていた。

「久保がサポーターに期待させるエネルギーはすばらしい」

 森保一監督は試合後にそう語っていたが、"石橋を叩いてもなかなか渡らない"指揮官はネガティブな側面を見たのではないか。

 今の森保ジャパンは4-3-3がファーストオプションと言える。

久保が得意とする右サイドは、中国戦のマン・オブ・ザ・マッチで、「最終予選のMVP」とも言える伊東の主戦場になっている。左も南野の定位置だろう。久保は左もできるが、ビジャレアル時代には左サイドでの起用でこじれているし、好んではいない。

 そうなると、「偽9番」のようなポジションはひとつの可能性となるかもしれない。 

 かつてメッシはいわゆるストライカーの代わりの偽9番(ゼロトップ)に入り、自由に絡むことで攻撃力を肥大化させ、最盛期を迎えている。当時のバルサは高い位置でボールを回すチーム構造で、そのスキルとビジョンによって複数の選手と絡み、相手を幻惑。止められない存在になった。

 久保はそれだけの資質を持っている。決して好調とは言えない大迫勇也の代わりに用い、攻撃力を高めることはできる。そのほうが田中碧のセンスや、伊東、南野の攻撃力も生きるかもしれない。

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