久保建英に期待したい「偽9番」。ただし、森保監督に選手ありきの戦術がとれるとは思えない

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 1月27日、埼玉スタジアム。カタールW杯アジア最終予選、中国戦の後半28分、久保建英(マジョルカ)の交代出場がコールされると、スタンドは沸いた。歓声を出すのは禁止なので、実際は小さなどよめき程度だったのだろう。しかし、底冷えする空気のなか、停滞した試合にわずかながら熱が起きる気配があった。

 久保は遠藤航に代わってトップ下で出場している。システムは4-3-3から4-2-3-1に変更され、久保を生かすためにチーム全体が動いたことになる。それだけの存在であることがわかるだろう。昨夏の東京五輪はグループリーグ3試合連続得点とチームを牽引。これからの日本代表を担うべき存在なのは間違いない。

 その一方で交代出場は「森保ジャパンのスタメンに、現状は久保のポジションがない」という現実を突きつけられていた。

 久保の適性ポジションはどこにあるのか?
 
中国戦の後半28分から途中出場、トップ下でプレーした久保建英中国戦の後半28分から途中出場、トップ下でプレーした久保建英この記事に関連する写真を見る「一番やりやすいのは、右サイドからトップ下を行き来するポジション」

 久保自身、東京五輪後のワールドカップ最終予選に向けたリモート会見で、自らの志向を語っている。

 客観的に見ても、久保はそのポジションに適性がある。左利きで、左足でボールを持って右から中央に横に斜めに、あるいは縦に切り込むプレーを得意としている。バックラインの前でボールを受け、コンビネーションを使って攻撃を最大化。本来の資質もあるが、バルセロナ下部組織時代にそのプレーを仕込まれている。実際にFC東京、マジョルカ、東京五輪代表で適性を見せてきた。

 リオネル・メッシも久保と同じタイプだろう。アルゼンチンの英雄は、その質を極めて世界最高の選手に到達した。神がかった突破からのゴールばかりに焦点があてられるが、コンビネーションプレーも卓抜だった。たとえば、右サイドでテンポ作って相手を動かし、一気に左サイドを駆け抜ける選手に合わせることができた。

 中国戦の後半34分に久保は右サイドで伊東純也とのパス交換でためを作ると、逆サイドを一気に攻め上がった中山雄太を見つけ、左足でのパスを出している。得点にはつながらなかったが、きれいにラインを破っていた。かつてバルサはメッシとジョルディ・アルバの左利き2人が作る世界観で勝利を重ねたが、仄かに同じ匂いが漂った。

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