「チームはバラバラ」疑問と不安を抱えながらも奮闘。今野泰幸が自らの日本代表ベストゲームに挙げた意外な一戦 (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO

 チームでうまく崩したというより、久保裕也が独力――相手の虚を突くタイミングで絶妙なコースに放ったシュート――で奪ったゴールは、当時のチーム状況を考えれば、これしかない形だったのかもしれない。

「だから、久保が個人で点をとってくれたのは、チーム全員に勇気を与えてくれましたよね。先にポンって点がとれたのは、僕自身にも与える影響はすごく大きかったです」

 はたして今野は、その後も相手の攻撃を完璧に封じたばかりか、後半52分にはペナルティーエリア内で右からの久保のクロスを受けると、冷静にシュートを流し込み、2点目のゴールまで決めてしまうのである。

「あの年(2017年)、ガンバ大阪で(監督の)長谷川健太さんが、僕をインサイドハーフで使っていたんです。得点やアシストも期待している、みたいなことを言われていて、自分なりにそれを意識していた年でした。

 僕は代表で(通算)4点しかとっていないし、そんなに点をとるタイプではないんですけど、得点に対する意識も高くなっていた時だったので、それを代表でもうまいこと出せて、得点することもできた。だから、すごく(チームの勝利に)貢献できた気持ちになりました」

 実は試合後、ハリルホジッチ監督も「今野がガンバでどのようなプレーをしているかを追跡し、アイデアが湧いた」 と抜擢の理由を明かしている。

「僕はインサイドハーフだったので、前線にスペースがあれば上がっていかなくちゃいけないし、僕が絡んでいかないと攻撃に厚みが出てこない。もし僕がダブルボランチ(のひとり)だったら、たぶんあそこにはいなかったと思います」

 初戦で苦杯をなめた難敵とのアウェーゲームも、終わってみれば2-0の完勝。敵地のサポーターの多くが、試合終了を待たずに席を立った。

 ノリがハマった――。

 今野がこの勝利をそんな言葉で表現したように、一見したところ、やることなすことうまくいった試合ではある。だが、今野らしい独特の表現に含まれているのは、必ずしもポジティブな意味合いばかりではない。

「一歩間違えば、大負けしていた可能性も十分あったと思います。完全アウェーで、会場の雰囲気もスゴかったんで。(UAEに)先に点が入ろうものなら、ガタガタって大崩れした可能性はありますよね」

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