松木安太郎流、サッカー解説の心得。オーストラリア戦はネガティブを排除し「応援目線」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro

---- 競技特性に応じて変えなければならないのが解説ということですね。

「そうです。野球も一球ごとに間があるので、いろんな話を盛り込めますが、サッカーの場合はアウト・オブ・プレーにならないと、それはできません。しかも、そういう時はコマーシャルが入ったり、スロー再生が入ったりして話せないんですよね(笑)」

---- 松木さんのサッカーを見る目線について教えてください。サッカー解説者はFW出身ならFW目線、ボランチ出身ならボランチ目線というスタンスの人が多いです。現役時代はサイドバックだった松木さんも、サイドバック目線なんでしょうか?

「解説者が自分の現役時代のポジションのところに目がいくのは当然とは思いますね。ただ、ボクの場合は現役から時間がだいぶ経っているので、サイドバック目線だけではなく、ベンチ目線というのもありますね。あと、応援目線(笑)」

---- 松木さんは日本代表がピンチになれば誰よりも早く「危ない!」、チャンスなら「シュート!」などの声を発します。失点しても「さあ、ここから!」と切り替えも早いです。

「切り替えの早さは意識したことないですけど(笑)。サッカーを見ていて何が楽しいかっていうと、ゴールが生まれる瞬間。日本代表が得点したら盛り上がるし、失点したら消沈する。まずはそこなわけですよ。どういうプレーをしたら何点もらえる、という競技ではないので」

---- ベンチ目線という話がありましたが、ヴェルディ川崎(1993−1994年)、セレッソ大阪(1998年)、東京ヴェルディ1969(2001年)を率いた時も同じような感じだったのでしょうか?

「そうですね。現役の頃からボールがタッチラインを割ったら、すぐに『マイボール!』と大声で主張するタイプでしたからね(笑)。ベンチから見ていても『オイ! 今のはファウルじゃないか!』って。

 だから、時には解説していてもベンチに座っている気分で発言することもあります。選手目線、サイドバック目線、監督目線、コーチ目線、応援目線......。いろんな目線が絡み合うのがボクのスタンスなんでしょうね」

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