サッカー日本代表の「サウジアラビア戦を観る権利」とは? 世界は母国のW杯予選をどう視聴しているか (3ページ目)

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by KYODO

 法律で定められてこそいないものの、その他のヨーロッパ各国でも自国の代表戦はみな無料のチャンネルで見ることができる。スペインでは国営放送のTVEと民放のMediaset、フランスでは民放のTF1とM6、ドイツも自国の代表戦は民放シェアナンバー1のRTLで放送されている。

 これには2011年に欧州連合の欧州裁判所が下した判決の影響が大きい。この裁判は、FIFAがイギリスとベルギーで、「政府がW杯の放送を無料チャンネルで行なうよう強制している」として提訴したもの。しかし、欧州裁判所は逆に「W杯やヨーロッパ選手権など公共性の高い試合を有料放送局が独占することを、EU各国は禁じることができる」という判決を出した。強制ではないが、これは事実上、各国へ無料放送にするようにとの勧告に近い。放映権を持っているFIFAやUEFAが、その金額を吊り上げるのを抑制する目的もあった。

 南米に目を向けると、アルゼンチンでも代表戦はホーム、アウェーに関係なく地上波のTV Publicaが放送している。有料ケーブルチャンネルのTyC SportsもTV Publicaから権利を買って放映しており、「こちらのほうが画像がきれいだ」「解説者が好き」といった理由で見る者もいるが、あくまでもサブチャンネルとして、である。

 サッカー人気の高いアルゼンチンでは、かつて「フットボル・パラ・トドス(サッカーを皆に)法」なるものがあって、リーグ戦もすべて無料で放送しなければいけなかった。これは前政権の人気取り政策だったため、今ではなくなったが、代表戦に関しては現在も「視聴覚通信サービス法」という法律が残っている。ここでは「国民が大きな関心を集めるイベントに関しては、人々はそれに自由にアクセスする権利を持っている」とされている。

 一方、ブラジルでは30年間、最大手民放グローボが地上波で代表戦を放送しているが、これは法律で守られているわけではない。したがって有料放送が独占する可能性はゼロではないが、まずそれは起こらないだろうというのがブラジルのジャーナリストの見方だ。

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