歴代日本人左サイドバックトップ10を都並敏史がガチ選定。長友佑都を超える選手はいるか (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Fujita Masato

3位 相馬直樹(元鹿島アントラーズほか)

 相馬は僕とは積んでいるエンジンが違いました。僕のエンジンは2000ccなんですけど、相馬は3200ccでした。だからトルクが違うんですよ。

 最後のスピードは同じでも、最初に出る力が違うんですね。「この体、この重さでこれだけ動くんだ」と。それでクロスは完璧。僕がアップアップになってしまうところを相馬は連続してできてしまう。

 それがあってしっかりと黒子として守備のよさを出しつつ、攻撃面でもいいタイミングで相手の深いところまで進入してチャンスを作る。僕のなかではSBとして完璧な存在です。

 僕は1対1の強さはそれほどなくて、やられそうなときは井原(正巳)に頼むとか、周りとの協調性はあったので、バレずに逃げてしまうところがありました。あるいは相手がドリブルで来たら、カニ挟みで倒してっていう、派手なんだけど非常にリスキーなことをやって、それで知名度を上げたりもしました。

 でも相馬は、そんなイチかバチかの勝負は絶対にしない。自分のプレーエリア内に引き込んで、自分で相手ボールを取りきれる。そのうえ簡単にはスライディングタックルをしないんですよ。僕はバンバンするんですけど、スライディングはイチかバチかなので、それをしないでボールが取れるのはすばらしいことなんですね。

 僕は35歳の時にアビスパ福岡でプレーしていて、引退を考えたことがありました。博多の森で日本対メキシコの代表戦があって、その時の相馬がとにかくすごかった。あれを見て「自分はもう二度と代表には戻れない」と悟って、勝手に引導を渡された感じでした。

2位 奥寺康彦(元ブレーメンほか)

 奥寺さんはウイングからSBにコンバートされて、ブレーメンなどで実績を残された選手です。ドイツサッカーに非常にマッチして、そのなかでSBとしての守備力も身につけて、結果として大活躍されました。今回のランキングでは外せない選手です。

 まず目の前の相手に抜かれない。そして抜群のスピードがありながら、本当に多彩なキックを操って、高精度のクロスをあげることができる。SBの選手では、キックの精度は奥寺さんがダントツに高いですね。

 1988年に代表で一緒になった時に、SBはサイドで練習するわけじゃないですか。僕も19歳で当時の森孝慈監督に「1日100本蹴れ」と言われて、ある程度左足でも蹴られるようになったんですけど、奥寺さんと会って、そこから1ランク、2ランクキック精度が上がりました。

 それまでワンパターンでしか蹴れなかったのが、太田宏介(パース・グローリー)のように鋭く曲げるようなキックとか、ジョルジーニョ(元鹿島)のようにインステップで真っ直ぐ鋭く飛ばすキックとか。奥寺さんはそれをどんな状況でもピンポイントで合わせられるんですね。

 ボールに対して助走角度と体の寝かせ方で調節をしていて、これがものすごく深い技術なんです。あれはすごかった。

 実績では、あの時代のブンデスリーガで、助っ人として日本人が活躍するのは、今の時代とは次元の違う話だと思います。アジアでは韓国の車範根という選手がいましたが、それ以外では誰も成功できなかった。日本のSBの歴史を語るうえでは外せない方ですね。

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