久保建英、三笘薫......東京五輪は通過点。だがどう戦ったかはその後に影響する
五輪サッカーの光と影(最終回)~2021年東京五輪
(1)から読む>>
東京五輪男子サッカー、3位決定戦でメキシコに敗れた後、マイクの前で涙にむせぶ久保建英の姿は印象に残った。それだけ人生を懸けていたのだろう。喜色に満ちたメキシコ人選手のスペイン語が残酷な対比を描いていた。そこには、五輪サッカーの光と影の縮図があった。
五輪では、各国が勝ち負けやグループリーグ突破、そしてメダルを巡って盛り上がる。一種のお祭りとは言え、明暗が出やすい。
しかし一方で、サッカーにおける五輪は、あくまで「過程」である。23歳以下(東京五輪は1年延期で24歳以下に)の大会で、育成年代の頂点。言わば始まりの場所だ。
1992年バルセロナ五輪で、スペイン五輪代表は金メダルを勝ち取ったが、その中心だったジョゼップ・グアルディオラが金メダリストとして語られることはほぼない。グアルディオラの場合、その後の選手・監督として大成した経歴のせいもあるが、他の優勝選手も同様である。サッカー選手は所属クラブでの活躍、もしくはワールドカップやユーロの実績で評価される。
ただし、五輪という勝負をどう乗り切ったかは、その後の人生に影響するだろう。負けるにしろ、勝つにしろ――。日本の東京五輪代表はいかに戦ったか?
3位決定戦でゴールを決めたものの、大会を通しての活躍はできなかった三笘薫この記事に関連する写真を見る ひとつ言えるのは、ディフェンスの安定感は過去最高だったことだろう。吉田麻也、酒井宏樹の2人は大会のベストイレブンに相当する。ケガで出遅れたが、冨安健洋も堅牢さを見せつけた。
「いい守備がいい攻撃をつくる」
日本はその原則を成立させていた。中盤で遠藤航、田中碧の2人が、持ち場を守って強固な防衛線を張っていたのも大きい。
守りのリズムがよかったことで、GK谷晃生は大会中に目覚ましい成長を遂げた。もともと守備範囲の広さや足技には定評があったが、その判断力が上がった。パンチングひとつとっても、強度・精度が抜群だった。ニュージーランド戦のPKストップは殊勲だ。
グループリーグでは3試合で7得点と、攻撃陣も躍動した。久保、堂安律のコンビネーションは相手にとって"喉元への刃"だった。俊敏性と技術が高い次元で融合しているだけでなく、阿吽の呼吸で敵を翻弄。グループリーグのメキシコ戦では堂安が右サイドを抜け出し、マイナス方向の戻しを久保がエリア内に走り込んで決めたが、2人の関係性の勝利だった。
1 / 3