46歳の伊東輝悦「俺、大丈夫なのか?」。カズのあとを追うテルは真のサッカー小僧 (4ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Sponichi/AFLO

---- 毎年契約更新していると思いますが、不安になることもないですか?

「僕、これまでのキャリアで複数年契約をしたことって1回だけなんです。それも2年契約で。だから『来年どうなるんだろう?』というのが29年も続いているので、そういうものだと思ってます。さっきの話じゃないですけど、ダメならダメで『何とかなるっしょ』って、毎年その繰り返しですよ(笑)」

---- そのポジティブ思考も、長く現役を続けられる秘訣なんでしょうね。

「でも、家族にはちょっと......。僕は27歳で結婚して子どももいるんですけど、清水のあと、甲府、長野、秋田、沼津と、ずっと一緒なんですよ。僕はどこに行ってもプレーするだけだし、チームメイトもいるし、馴染むのは楽だからいいですよね。でも、家族はそういうわけじゃなくて、いろいろな街に移って、そこで生活するわけで。

 だから、家族には苦労かけてるなっていうのが、僕のなかではちょっと引っかかってるというか、迷惑かけてるなって思っていて......。もちろん、それによって経験できることもあるとは思いますけど」

◆28年ぶりの快挙に沸く日本。前園真聖はアトランタ五輪で何を学んだか>>

---- 自分から現役をやめようなんて考えないですよね。

「いや、そういうこともあるんじゃないですか。もう体が無理だ、もう練習したくない、こんな思いまでしてサッカーしたくないって思うようになったら、自分からやめることだってあるかもしれない。何歳までできるかなんて、自分でもわからないし。

 ただ、今はアスル(沼津)でプレーしているので、アスルが勝つことが一番の目標ですし、少しでも自分がその力になりたいなって。その気持ちが強いです」

 伊東輝悦、46歳。25年前に『マイアミの奇跡』の主役となった男は、あの頃と同じ情熱を持ち続け、今も日々ボールと格闘する。その鉄人ぶりは、もはや伝説と言っていい。そして、カズのあとを追う"テル"という存在は、いずれ人々の語り草となるに違いない。


【profile】
伊東輝悦(いとう・てるよし)
1974年8月31日生まれ、静岡県清水市(現・静岡市清水区)出身。1993年、東海大学第一高校(現・東海大学付属翔洋高校)から清水エスパルスに入団。中盤の要として活躍し、2010年まで在籍する。その後、ヴァンフォーレ甲府、AC長野パルセイロ、ブラウブリッツ秋田と渡り歩き、2017年からアスルクラロ沼津でプレー。各世代の日本代表に選ばれ、1996年アトランタ五輪出場、1998年フランスW杯メンバーにも選出される。ポジション=MF。168cm、70kg。

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