南米の強豪と「同じ目線で戦っていた」。森保ジャパンが見せていた日本サッカーの進化

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

日本代表が強豪国と戦う時(9)~ウルグアイ
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「ガーラ・チャルーア」(チャルーアの爪)

 それが、ウルグアイサッカーの代名詞である。支配者の侵略に最後まで抗ったチャルーア族の不屈の精神を表す。ウルグアイ代表のアイデンティティーで、どこまでも戦い抜く魂の咆哮だ。

「ウルグアイ人は神も悪魔も恐れない」

 ピッチに立ったウルグアイ選手は、向かってくる相手には牙をむく。その点、世界的なストライカーであるルイス・スアレスは象徴的存在だろう。勝負のためには是非もなし。モラルよりも本能で動いて、噛みつくことだってある。

「俺は1年に何足も靴を買ってもらえる家の子ではなかった。早い話、低所得層の生まれだよ」

 スアレスは淡々と言う。荒々しい闘争心は、貧困とも結びついている。

「子供の頃、スニーカーを店で選んだ覚えはない。あるものを履いていた。でも、母さんには毎日、感謝していた。いつも必ずできるだけのことをやってくれていた。人間は、望めば何でも手に入るわけではない。時間だけはいくらでもあったから、とにかく友達とボールを蹴っていた。土のでこぼこのグラウンドや街角で。サッカーでは誰にも負けなかった。どんな靴を履いていたってな」

 そのような精神を集結させ、人口340万人のウルグアイは世界王者に二度も輝いているのだろう。

 日本サッカーは、ウルグアイとの戦いで何を得られるのか?

ウルグアイ戦で先制ゴールを決め、勝利に貢献した日本代表の南野拓実ウルグアイ戦で先制ゴールを決め、勝利に貢献した日本代表の南野拓実この記事に関連する写真を見る 2018年10月、埼玉。ロシアワールドカップでベスト16に進んだ熱狂の後、日本は森保一監督の新体制となって、強豪ウルグアイを迎えている。世代交代で新しいメンバーが多かったために、大敗を予想する声もあった。

 森保ジャパンは軽快にボールをつなぎ、主導権を握った。10分には左サイドの中島翔哉が斜めのボールを入れると、南野拓実がディフェンスを背負いながら反転し、右足を振り抜いて先制に成功している。攻撃に入った時の迫力は満点だった。

 28分には空中戦で競り負けて折り返され、それを放り込まれて同点に追いつかれた。セットプレーの弱さは攻撃面も含め、改善の余地があるだろう。単純な高さの欠如は永遠の課題だ。

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