なでしこ、東京五輪メンバー選考の裏にあった3人の物語。変化で目標を叶えた者と忘れてはいけない人物 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 4月の代表2連戦(パラグアイ戦、パナマ戦)では磨いた守備力を格下相手に確認することはできなかったが、宝田のオリンピック行きを確実にしたのは、今月10日に行なわれたウクライナ戦だ。宝田はCB熊谷紗希(FCバイエルン・ミュンヘン)の相棒を務めた。隙を突かれて自陣深くまでえぐられた際の対応では、落ち着いて相手と対峙し、飛び込みすぎず、相手の呼吸を読みながら仕掛けるスイッチが入る直前に一歩間合いを詰めた。このワンプレーだけでも、アメリカで多くのことを吸収してきたことがわかる。さらにはゴール前へのロングフィードに、セットプレーからの豪快なゴールを決める得点力まで披露した。

 選考の最後に飛び込んだのが田中美南(INAC神戸レオネッサ)だ。4月の国際親善試合では絶好の決定機を外すなど好調とは言い難かった。ラストチャンスである6月の2連戦もウクライナ戦で中島依美(INAC神戸レオネッサ)が得たPKを決めた得点と、メキシコ戦では岩渕真奈(アーセナル)のアシストで得た1点とアピールは弱かった。この時点ではギリギリの当確ライン上にいたと思われる田中だったが、非公開で行なわれたメキシコとの2戦目で怒涛の4連続ゴールを決めて一気に当選ラインを超えた。

 実力者揃いで、お膳立てができてしまうベレーザで得点を重ねていた田中が昨シーズン、ライバルであるINAC神戸レオネッサへ移籍を決めたのは、自分で切り拓く力をつけるため。今シーズンドイツへ渡ったのは、ハイプレッシャーの中でも自分のプレーを出せるようにするため。そのすべては東京オリンピックを見据えてのことだった。

「東京オリンピックは目標であり、活躍したい一番の場所」と断言する。田中はオリンピックのピッチに立つために、できることはすべてトライし、何が何でもオリンピックへ行くんだという気迫が実を結んだ。

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