日韓戦で見えた森保監督が求めるもの。名波浩がその成功例と失敗例を解く (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • 代表撮影:日本雑誌協会

 ボールを失ったあとの切り替えにしても、プレスの密集を作るのが早かった。あれは、見ていて非常に気持ちがよかった。ひとりが(プレスに)行ったなと思って見ていると、気づいた時にはもう、3、4人が囲んでいた。その結果、「あっ、これはもう(ボールが)奪えちゃうな」という感じで見ているシーンが多かった。

 前半30分すぎからは、日本と韓国でやっていることの質が違いすぎて、さすがに韓国はしんどかったはず。韓国は、あれだけ後ろ向きなサッカーをやっていてハイプレッシャーを受けたら、もう次の選択肢がない。ひとりでふたりをはがさないとチャンスにならない状況だった。

 それに対して日本は、狭いエリアでボールを奪い、密集させておいて、広いエリアへ展開する。それをシンプルにやれていた。

 そんななか、たぶん森保一監督は「こういうことをやりたいんじゃないかな」と思ったのが、後半7分のシーン。

 自陣で奪ったボールを吉田が縦に入れ、守田が前を向いて、そこからサイドを崩していくという展開があって、その際に多くの人数が攻撃に絡んでいった(最後はMF江坂任のシュートが相手GKに防がれる)。

 ここでのテーマは、いわば「奪ったあとの質と、チーム全体のゴールへの推進力」。この一連のプレーに、森保監督のやりたいことが表現されていたように思う。

 対照的に「やりたいことをやり切れなかったのではないか」と感じたのは、前半34分のシーン。相手FKを守田がうまくカットして、そのままハーフライン付近まで自分でボールを運び、周りの選手もカウンターで一気に上がっていった。でも、守田のパスが乱れて、結局遅攻になってしまった。

 世界を相手にするなら、これは絶対に完結させなければいけないプレーだった。2018年ロシアW杯では、日本はベルギーにそれをやられて負けたわけだから。

 まして韓国相手に、あんなダラけたカウンターになってしまってはダメ。せめて敵陣深くまで入っていく、パワーと人数をかけてほしかった。

 強い相手との対戦を想定した時、森保監督も"そこは"求めているところだと思う。

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