森保J、キルギスの術中にはまる。長友、酒井が上がれなかった理由 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by KYODO

 構造上、もうひとり満足なプレーができなかった選手は遠藤航(シュツットガルト)だ。守備的MFを務めたのは柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)とこの遠藤の2人だが、柴崎より低い位置で構えた遠藤は、相手の1トップ下(グルジキト・アリクロフ)のポジションと重なったため、そのマークを浴びることになったのだ。つまりフィードの第一歩を抑えられる格好になった。

 両サイドバックが上がれない。両ウイングは孤立する。ビルドアップに苦戦する。それでも、前線にボールが収まるタイプのアタッカーがいれば、もう少しなんとかなったかもしれない。しかしこの日、森保監督が先発で起用したのはスピード型の永井謙佑(FC東京)。使うべきは鎌田大地(フランクフルト)ではなかったのか。終盤、交代で入った鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)も、永井同様、ボールが収まるタイプではなかった。

 キルギス式3バックの前に日本は、攻める人と守る人に分断されてしまったのだった。伊東に代わって中島翔哉(ポルト)が投入されても、遠藤航に代わって山口蛍(ヴィッセル神戸)が投入されて(ともに後半33分)も、状況に変化はなし。サイドバックが、前の選手を追い越して相手ゴールライン付近まで辿り着いた回数も、酒井の1回限り(後半20分)に終わった。流れの中から日本が惜しいチャンスを掴んだ回数もわずか3回に終わったが、そこには高い必然性が宿っていた。

 日本の4-2-3-1より、単純に後ろで構える人数が1人少ない布陣。強者の日本に対し、キルギスは日本より攻撃的な布陣で高い位置からプレスを掛けてきた。敵将ながら思わず拍手を送りたくなる監督采配だった。

 日本ではなかなかお目に掛かることができない攻撃的な3バック。しかし世界のサッカー界には長年君臨するスタイルでもある。クライフ時代のオランダ代表。アヤックスもこれで欧州一に輝いている。マルセロ・ビエルサが率いたアルゼンチン代表&チリ代表。ルイス・ファン・ハール、ジョゼップ・グアルディオラ時代のバルセロナ。フース・ヒディンク時代の韓国代表&オーストラリア代表。ハビエル・アスカルゴルタ時代のボリビア代表......。

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