モンゴル代表はかつての日本代表。格下と対戦するW杯2次予選の価値 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

「日本の攻撃は、まるで止められなかったです。思わず、拍手しそうになったほどでした」

 ワイス監督は言う。

「どうにか数的優位を作って守ろうとしましたが、無理でした。コンパクトなディフェンスをしようとしましたが、できなかった。前線はほとんど何もできませんでした。ただ、我々が持っているレベルの最大限を出せたと誇りに思います。20分過ぎまでは0点に抑えることもできました」

 特筆すべきは、モンゴル代表選手の闘争心だろう。前半だけで4失点を喫し、後半11分に5点目を奪われたものの、最後の最後まで集中を切らさなかった。何度となく、シュートをゴールライン近くでかきだした。勤勉かつ粘り強い戦いぶりだった。

「我々は、"どんな結果でもしっかり戦い抜く"とスタートしました。先制点を奪われてから、熟れたリンゴが木から落ちるように失点を続けましたが、後半はよくなって、可能性を見せられたと思います。もしかすると、日本のことをリスペクトしすぎたかもしれません。ハーフタイムに、"同じ人間なのだから、もっとアグレッシブにファイトすべきではないのか"と伝えました。力をつけることができているので、成長のプロセスをずっと続けたいです」

 ワイス監督は、戦いに及第点を与えた。

 かつて、日本も黎明期には列強国の胸を借りることがあった。1980年代まではサッカー弱小国のひとつだった日本だが、90年代になるとフランス、アルゼンチン、ブラジルに挑むようになり、大敗するたび、力をつけた。主力選手が経験を重ね、それを国内に伝え、改革が行なわれ、有力選手が出てくる――。そのサイクルのなかで強化されてきたのだ。

 次は、日本が胸を貸す番なのかもしれない。

 たしかに、日本がモンゴルと対戦し、得られるものはほとんどないだろう。ただ現実に、日本のみがグループで突出したW杯2次予選はこれからも続く。弱小国に力を見せつけることは、アジアにおける日本の立場を不動にし、尊敬される対象になることにもつながるはずだ。

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