スペインの戦術マスターは森保式3バックを評価。「意図は理解できる」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Sano Miki

 右利きの中島が左サイドから中央に切り込み、シュートを放ったり、ラストパスを入れて躍動する。その一方で、長友佑都(ガラタサライ)がタッチラインを駆け上がって、幅を使いながら、深みも作っていた。ウィングバックとシャドーが連動する形は戦術的な狙いどおりで、右サイドの堂安と酒井宏樹(マルセイユ)との関係性もそれに近かった。

 守りを固めてくる相手に対し、戦術的には正しいチョイスと言えるだろう。ピッチの中央とサイドでボールの方向を目まぐるしく変えることによって、守備陣の混乱を引き起こしていた。中島が蹴った直接FKがバーを叩いたり、GKの必死のセービングに防がれるなど、いくつかあったチャンスで先制点を決めていたら......戦いの印象も変わっていたはずだ」

 エチャリはそう言って、戦術デザインを具体化できていたことを評価した。もっとも、手放しに賞賛しているわけではない。

「日本がゲームを支配していたのは間違いないが、攻撃そのものはスピードが足りなかった。リトリートし、ブロックを作った相手を崩し切るのに十分なコンビネーションのスピードを作れていない。前半30分を過ぎてからは、明らかに勢いも落ちた。またCKも、バリエーションを出そうとしていたが、効果的ではなかった。

 そして後半は、トリニダード・トバゴのカウンターに苦しんでいる。

 後半10分、単純な縦パスに対応できず、昌子源(トゥールーズ)が足の速い相手FWに走り負けてしまい、ゴール前まで突破を許す。(スペースを)カバーするポジションを取れていなかった。1対1に対応したGKシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)のシュートブロックで事なきを得たが、迂闊だったと言えるだろう。

 日本はその後、攻撃の効率性が徐々に低下している。両チームともに次々と交代カードを切ることによって、お互いが戦況を見守り、動きが少なくなった。80分近くまで、試合は膠着した。

 一気に流れが変わったのは、長友に代え、原口元気(ハノーファー)を投入したあとだろう。

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