キリン杯とコパ・アメリカの森保J。
重複する9人は何を意味するのか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 キリンチャレンジカップ(トリニダード・トバゴ戦、エルサルバドル戦)とコパ・アメリカを戦う日本代表のメンバーが発表された。両者はほぼ、別部隊になった。

 重なる選手は、川島永嗣(ストラスブール)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、植田直通(セルクル・ブルージュ)、冨安健洋(シント・トロイデン)、中山雄太(ズウォレ)、柴崎岳(ヘタフェ)、中島翔哉(アル・ドゥハイル)、久保建英(FC東京)、岡崎慎司(レスター)の9人。コパ・アメリカで多くを占めるのは、U-22を中心とするアンダーカテゴリーの選手になる。

 日本サッカー協会は今回のコパ・アメリカで、選手を拘束する力がない。所属クラブが「ノー」と言えば、それに従うまでだ。連続して参加することになった上記の9人と、コパ・アメリカのみに出場する板倉滉(フローニンゲン)と伊藤達哉(ハンブルガーSV)の海外組2人は、その縛りが弱かった選手と言うべきだろう。

 久保が所属するFC東京は、現在Jリーグで首位を走り、久保もチームの成績に直結する活躍を見せている。FC東京はコパ・アメリカ期間中に3~4試合を消化するので、久保をコパ・アメリカへ行かせたくないというのが本音だろう。森保一監督が久保に強烈なラブコールを送り、FC東京がそれに屈した、あるいは応えた格好だ。

24日、コパ・アメリカの代表メンバーを発表する森保一日本代表監督24日、コパ・アメリカの代表メンバーを発表する森保一日本代表監督 3月下旬に行なわれた前回の代表戦(コロンビア戦、ボリビア戦)の時にはなかったムードである。久保の評判はこの2カ月弱の間に沸騰。日本サッカー界の様相はたちどころに一変した。しかし、17歳の久保を2つの大会に連続して参加させることは、何か急ぎすぎている気がしてならない。どちらかひとつでいい気がする。

 久保の技量がこの先どこまで伸びるか定かではないが、現時点でイメージされる将来性は、日本サッカー史上最高と断言したくなる期待の星だ。客寄せパンダにすることなく、大人たちにはじっくり大切に育てる義務が課せられている。久保を無用に消費してはならない。

 久保の知名度は、まだ世界的に低い。Jリーグでプレーしている間は、知る人ぞ知る17歳の域にとどまるが、代表デビューを飾れば、知名度は急上昇するだろう。コパ・アメリカに出場し、そこで活躍しようものなら世界のマーケットが放っておかない。FC東京が久保のコパ・アメリカ行きを認めた背景が、高値で売りさばくためだったとしても不思議はない。海外なら普通にある話だ。

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