平成の「2つのベルギー戦」が物語る日本サッカーの驚異的な成長

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

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平成スポーツ名場面PLAYBACK~マイ・ベストシーン 
【2002年6月&2018年7月 サッカーW杯vsベルギー】

歓喜、驚愕、落胆、失意、怒号、狂乱、感動......。いいことも悪いことも、さまざまな出来事があった平成のスポーツシーン。現場で取材をしたライター、ジャーナリストが、いまも強烈に印象に残っている名場面を振り返る――。

 思えば、平成という時代が始まった当時、日本にとってワールドカップは、出るものではなく、見るもの。はるか彼方にぼんやりと見える夢の舞台だった。

 日本代表が、後半ロスタイムの失点でワールドカップ出場を逃した1993年(平成5年)のワールドカップ最終予選、いわゆる「ドーハの悲劇」は、日本スポーツ史に残る重大事として有名だが、その4年前(平成元年)のワールドカップ予選はというと、日本は北朝鮮の後塵を拝し、一次予選で敗退している。

 要するに、本大会出場はおろか、最終予選にすら進めていないのである。しかも、それはまさかの番狂わせなどではなく、それなりに妥当な結果だったのだから、今では信じられないような話である。

 そんな日本が、1998年(平成10年)にはワールドカップ初出場を果たし、2002年(平成14年)には、ワールドカップを開催した。平成の時代が終わろうとしている現在、日本は1998年以来、ワールドカップ出場を一度も逃すことがなく、連続出場記録は6大会続いている。

 平成の約30年間は、まさに日本サッカーが驚異的な成長を遂げた時代であり、その原動力となっていたのが、ワールドカップという大目標だった。平成の日本サッカーを振り返るとき、もちろん、思い出に残る試合はひとつやふたつではないが、やはりワールドカップを抜きにはできないと感じている。

 これまで日本が、6度出場したワールドカップで戦った試合数は、全21試合。では、そのなかでベストマッチはどれだろうか。

 最も新しい試合であり、最も鮮明な記憶として残っている分、若干ベタな感じがあり、この試合を挙げるのは少々気恥しい気もするが、やはり2018年(平成30年)ワールドカップの決勝トーナメント1回戦、ベルギー戦だと思っている。試合内容については、あらためて説明する必要もないだろう。

2018年ロシアW杯、日本は強豪ベルギー相手に互角の戦いを見せた2018年ロシアW杯、日本は強豪ベルギー相手に互角の戦いを見せた 日本がワールドカップのベスト16で敗れるのは、これが3回目だったが、それまでの2回は、どうにも退屈な試合内容だった。最もベスト8に近づいたという意味では、PK戦までもつれ込んだ2010年(平成22年)大会のパラグアイ戦なのだろうが、当時はそんな感傷的な気持ちにはなれなかった。

 対照的に、このベルギー戦は優勝候補を土俵際まで追い詰めた試合展開といい、劇的な幕切れといい、極上のエンターテインメント。見応えのある、あっという間の90分間だった。

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