「南アW杯のゴールを守れない悔しさ」が、今も川口能活のエネルギーに (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 サポートメンバーの4人、なかでも香川は、実際に本大会でプレーしてもおかしくない選手だった。そうした若手の前で、無様な姿を見せるわけにはいかない――そんなプライドが、代表23名の選手全員にあったのだろう。

 決勝トーナメント1回戦。パラグアイ戦は、PK戦の末に惜しくも敗れた。

パラグアイ戦に敗れたあと、ピッチで戦った面々を慰める川口能活。photo by AFLOパラグアイ戦に敗れたあと、ピッチで戦った面々を慰める川口能活。photo by AFLO 試合後、多くの選手がピッチに座り込み、涙に暮れていた。そうした状況のなか、川口は涙を見せることなく、ピッチで戦った選手たちに水を渡すなど、普段どおりの仕事を最後まで全うした。

「試合が終わって、W杯が終わっても、感傷的にはならなかったですね。ベスト16の余韻に浸ることもなかった。この大会での自分の役割はわかっていましたけど、やっぱり選手は試合に出てなんぼ、じゃないですか。終わった瞬間、(所属の)ジュビロ磐田に帰って、レギュラーポジションを奪い返すことしか考えていなかったですね」

 川口の周囲には、同じ思いを持つ選手がたくさんいた。中村俊輔は大会中から、大会後にステップアップするために必要なことをずっと考えていた。中村憲剛も早くチームに帰ってプレーしたいと、すぐに気持ちを切り替えていた。楢崎正剛も、稲本潤一も、まったく同じ考えだったようだ。

 しかし、彼らはW杯期間中、不満な姿勢や言動を一切見せなかった。ただひたすら、献身的にチームをサポートしていた。それは、極めて"プロフェッショナル"な姿勢だったと言える。

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