なでしこ、W杯出場へ計算された
オーストラリア戦。「決着は決勝で」 (4ページ目)
ピッチ上では困惑を隠せないのは、むしろ日本の選手たちだった。直前にピッチに入った増矢理花(INAC神戸)は指示を理解していても、いつボールが来てもいいように、ポジショニングを怠っていなかった。2点目を獲って1位通過を望む選手は少なくなかったのだ。
選択の是非を問うなど愚問である。ただ、交代枠を2枚残している状況ならば、せめてそれをすべて使い切って、1分でも1秒でも、選手たちのあの"何もしない苦痛"の時間を軽減できなかったのか。世界大会でもこういったケースは起こり得る。なでしこたちも、したたかなズル賢さを身につけてもいいのかもしれない。逃げ方を知らない日本の方が間違いなくダメージを受けていた。
粘りを見せた"なでしこ"らしい試合だっただけに、後味の悪さを受け入れがたくもある。しかし、選手たちは全力で舵を切っていた。終了後、選手たちはベンチに戻らず、自然と中央に集まった。異様な雰囲気の中、熊谷が努めて明るく声をかける。
「準決勝で中国に勝って、もう一度オーストラリアとやろう」
次は逃げる必要はない。勝負をつける場は決勝の舞台だ。
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