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なでしこオランダ戦は「ありがたい敗戦」。
悪夢の失点から何を学ぶのか (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

 この試合の最後の失点もそのひとつ。中村が中途半端に出したパスが失点の引き金になった。残り数秒というところでカウンター攻撃を仕掛けられたとき、どう対処するのか。極論で言えば、サイドラインを割るクリアに徹するのもひとつ。リスクを冒してまで自陣でキープする必要はない。この意識統一がされていなかったこと、それに導く声がなかったこと、要因は多くある。この瞬間はたまたま中村がそのミスを演じてしまったが、こういった致命的な綻(ほころ)びがそこかしこで見えていたのは確かだ。それこそが指揮官の言う「やってはいけないパスミス」である。

 中村にとっては痛恨の極みだろう。しかし、中村はアルガルベカップで可能性を示したひとりでもある。CBの要でありキャプテンでもある熊谷は、4戦すべてのフル出場を果たし、そのうち実に3試合で中村とペアを組んだ。

 熊谷は「前に強いし、やることをハッキリしてくれる」と中村について語る。中村も「経験の差は言うまでもないですが、熊谷さんはやることをハッキリ指示してくれる」と同じ言葉が返ってきた。カバーリング、ラインコントロール、カウンターへの対応と、実戦で課題に取り組みながら、一戦ごとに互いにカバーし合えるようになってきた。だからこそ、この致命的ミスは中村を大きく成長させるものになるはずだ。試合直後すぐさま中村に声をかけ、プレーについて修正点を話し合った熊谷も中村の可能性を感じているだろう。

 また全試合で得点に絡み、自身も4ゴールを挙げた横山の奮闘には目を見張るものがあった。ここ1年半で積み上げた体力強化により、90分間フル出場できるフィジカルを身につけた。ここぞというときに得点を挙げる決定力は、いまやなでしこジャパンで断トツだ。そしてもうひとつ、横山の成長を感じるのは周りへの配慮だ。試合終了後には必ず自分から全員と健闘をたたえ合う。最も印象的だったのは、最終戦後のピッチで失点のショックを受けているであろうGKの山下の元を訪れたこと。170cmの山下の腕に優しく触れる横山は、山下よりも大きく見えた。同時に周りへ視野を広げられる選手は以外に少ない。横山には、このなでしこジャパンに最も必要なものが備わっている気がしている。

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