ヤングなでしこが目指すは東京五輪。「この3位はあくまでも通過点」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 90分間で日本が放った29本のシュートを、アメリカの守備陣は固いブロックで防ぎ続けた。ただ1本を除いて。日本がアメリカのゴールをこじ開けたのは、試合時間も残りわずかとなった87分。左サイドバックの北川ひかる(浦和レッズL)のパスを受けた上野が、これまで浴びせたミートするシュートとは対極のフワリと浮かせたループシュートでゴールネットを揺らした。

「最後の最後まで苦しい試合で決めきることができてよかった」と、上野は安堵の表情。初戦にハットトリックを達成し、今大会にピークが合った上野だったが、大会途中からは苦悩も抱えていた。

 2トップの一角として、主力の座を射止めていた上野が右大腿を痛めたのは、準々決勝で先制点に絡むプレーをした時だった。準決勝ではスタートからプレーするも途中で再び足を痛めて交代。決して万全の態勢ではなかったが、いつも通り平常心でコツコツとコンディション調整に力を注いでいた上野。あまり表情を崩さない上野が、この決勝ゴール後は、力強く突き上げた両手を、多くの仲間が駆け寄るまで下ろそうとしなかった。

 そこに彼女が抱き続けてきた"責任感"の重みを感じずにはいられない。この上野の決勝ゴールで日本は銅メダルを獲得。日本は上野のGOLDEN BOOT(最多得点)と、ファイナリストの北朝鮮、フランスを抑えて杉田がGOLDEN BALL(大会MVP)、そしてフェアプレー賞を受賞。表彰式では選手たちの曇りのない笑顔が溢れた。

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