リオ五輪女子サッカー決勝に見る。なでしこ「4年後のVロード」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 準々決勝、準決勝と1試合に30本近いシュートを浴びせながら、1ゴールも挙げられなかったことは、攻撃スタイルにこだわってきたブラジル女子サッカーに大きな課題を投げかける形となった。

 フィニッシュやラストパスの精度の問題もあるが、ブラジルの猛攻をしのぐ守備力が各国に備わってきていることも明白。攻撃力だけでは世界タイトルを手にすることは難しい現実がそこにあった。

 最も興味深い戦いをしたのがスウェーデンだ。準々決勝では、現スウェーデン監督であるピア・スンダーゲが前回大会まで率いていたアメリカを延長PK戦の末に破った。アメリカの教え子から"消極的"と言われる展開ではあったが、スンダーゲ監督は「実際にファイナルに行くのはアメリカではなく、スウェーデンだ」と一蹴。続く準決勝では超攻撃的サッカーを身上とするブラジルを相手に守備を固めた。

 誤解してほしくないのは、ただ単に引いた布陣を取っているのではないということ。6月になでしこジャパンもスウェーデンと親善試合で対戦して、0-3で敗れている。このとき日本が体感したのは、組織的守備からカウンター攻撃への移行の速さだった。

 グループリーグでブラジルに1-5の大敗を喫したことで、スンダーゲ監督は舵を守備側に切り替えたが、そこには重ねてきた組織力への確固たる自信があった。ブラジルの攻撃に対して焦りはなく、バイタルエリアで不利になると迷わずラインを割ってCKを与える。跳ね返せる自信がなくては、あれほど堂々とCKを与えることはできない。

 詰まったスペースにおいてもプレスとコース消しは的確。ボールの出どころには必ずチェックに入っている。確かにスウェーデンの決定機は少なかったが、あれだけの悠然とした組織力を見せつけられると"消極的"というよりは"策"であると感じずにはいられなかった。

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