【なでしこW杯】宮間あやの言葉で振り返る、準優勝への歩み (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 今大会で最も印象に残っているのは、決勝を前に最後のトレーニングを終えた後、宮間に“チーム”について問うたときの言葉だ。

「この23人でできる最高にチームになったと思う」

 その後、静かに宮間はこう続けた。

「このワールドカップでは絶対に人に厳しく言わないって決めてきたから」

 キャプテンという立場でこれだけの選手たちが迷い、悩んできた1カ月半。アメを利かせるためにはムチも必要だ。しかし、彼女はそのムチを封印し、その分多くの時間を割いてそれぞれの選手と話すという、いちばん手間暇のかかる方法を選んでいた。技術・戦術だけでなく、選手それぞれのメンタルを想ってのことだ。これがどれだけ大変なことなのかは想像に難くない。

 その形の最たるものが、決勝のピッチにあった。アメリカを相手に連続失点で完全に浮き足だってしまった選手全員を集めた宮間。その声を真剣に受け止める選手たちから見えたのは、宮間に対する揺るぎない“信頼”だった。必死に宮間についていこうと、その声でこの窮地を脱しようとする選手たちがいた。良くも悪くも、今のなでしこジャパンの現状が詰まった形になった決勝だったが、だからこそ宮間は最後に胸を張ってこう答えた。

「このワールドカップで得られたのは“自信”。しっかりと準備をすれば行きたいところに行くことができる。“連係”って果てしなく上がるもの。それを成り立たせるには、もっともっとできると自信を持てる時間が必要だと思います」

 楽しくも、苦しくもあったワールドカップ。決勝では多くの選手が「自分たちの準備不足だった」と口にした。ドイツワールドカップのような“勢い”ではなく、ロンドンオリンピックのような“意地”でもなく、堅実にひとつひとつを重ねた準優勝。

 これをどう捉えるか――年明けには厳しい戦いが予想されるオリンピック予選が控えている。リオオリンピックでの戦いにつながったとき、初めてこのカナダでの1カ月を“経験”にすることができるのではないだろうか。

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