元U-17監督城福浩が語る「日本の停滞とアジアの進化。その理由」 (2ページ目)

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 Jリーグが誕生し、それにともなってJクラブのユース組織も生まれた。指導者養成に力を注ぎ、トレセン制度を整備して、国体をU-16の大会にするほか、育成年代に通年で争うリーグ戦を導入したことの成果も大きかったと言える。

 陸上の100メートル走にたとえれば、それまで日本は13秒ぐらいで走っていたのが、食事やフォーム、トレーニング方法などを矯正した結果、タイムを縮めて「10秒フラット」で走れるようになり、アジアの他の国を頭ひとつリードすることができたのだ。

 ただし、10年でタイムを3秒縮めたのだから、次の10年でさらに3秒縮めて、7秒で走ることができるかといえば、そんなわけがない。これはサッカーでも同じことだ。10年でアジアのトップレベルになれたからといって、次の10年で、W杯で優勝できるようになるわけがない。日本が今目指しているのは、まず「9秒9」で走ること。しかし、その壁は高く、コンマ1秒を縮めることに苦しんでいるところといえる。

 そこに、日本から遅れること10年、中国、イラン、イラク、UAE、カタールといった国々が、同じようにタイムを縮めてきた。つまり、日本のレベルが落ちたのではなく、ライバルたちが追いついてきたと考えるべきだろう。

 2011年のことだ。私は、小野剛氏(元日本サッカー協会技術委員長。現ロアッソ熊本監督)とふたりで中国に招かれ、中国サッカー協会A級コーチライセンスの講師を務めた。

 ひととおりレクチャーしたあとで、「何か質問はありますか?」と訊ねると、元中国代表選手の指導者たちが身を乗り出して、我先にとばかりに手を上げて質問攻めにしてきた。

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