王朝崩壊。INAC神戸に何が起きていたのか (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 INAC再建にもっとも必要なものがコミュニケーションだ。シーズン当初はベテラン勢が若手に根気強く話をする場面も見られた。しかし、なかなかチームとして結果を出せない状況が続き、今ではそこに溝すら感じてしまう。与えられることに慣れてしまった若手と、与え続けることに疲れてしまったベテランといったところだろうか。会話はキャッチボール。互いに意見を出し合って初めて成立する。良くも悪くも一方通行は疲弊するものだ。

 その間をつなぐ中堅選手が少ないことも要因のひとつだろう。髙瀬や中島依美がそこを担うが、もっとも適任なのがドイツから戻ってきた田中明日菜だ。2週間前に合流した田中は登録の関係でエキサイティングシリーズに出場はできない。彼女はその環境下で冷静にチームを分析していた。

「自分がもしCBとして入ったら、前線がいい形でボールを受けられるように相手をはがしてからボールを味方に付ける」と自身を置き換えながらシミュレーション。「声出しもどんどんやる。DFは声出してナンボでしょ」と笑う。攻撃も守備もチャレンジ&カバーが基本だ。そこにコミュニケーションは不可欠なのである。

 チームを再構築するために、今こそ原点に立ち帰る時期なのではないだろうか。世代交代でチーム構成が大きく変わるときは、必ず試練が伴うもの。乗り越えられれば、必ず成長につながるはずだ。まずは明確なチームコンセプトを打ち出し、しっかりと全員のベクトルを合わせること。今週末のリーグ最終節を終えれば、翌週から開幕する皇后杯が今シーズン最後のタイトル争いとなる。初戦まで約3週間(INACの初戦は12月13日)。INACは決死の生まれ変わりを果たせるだろうか。

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