今野泰幸投入で引き締まった、日本代表の現実を憂う (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 高齢化しつつある日本。世代交代が求められている日本の現状を踏まえれば、アジアカップは、勝つことも大切だが、可能性のある若手に経験を積ませる場に充てる必要がある。遠藤、今野、長谷部は、駒不足が深刻化した時に選べばいい。いま、アギーレと協会がやっていることは、目先の勝利欲しさに他ならない。2018年から逆算したプランには全く見えないのである。

 オーストラリア戦に話を戻せば、前半と後半でこれほど内容が変わった試合も珍しい。布陣を4-3-3から4-2-3-1に変えたことが功を奏したと言われるが、それ以上に大きかったのは、後半から投入された今野の存在だ。彼が守備的MFに入ったことで、プレイ内容は締まった。日本の現実を突きつけられた気がした。

 とはいえ、今野がこれまで代表チームで守備的MFとしてプレイしたことはほとんどない。過去83回、代表選手としてピッチに立っているが、サイドバック、センターバックとしてのプレイがほとんどだった。守備的MFは彼の本職ながら、代表チームの守備的MFとしては新人も同然。時の代表監督は、そのユーティリティ性の高さをいいことに、本職ではないポジションでばかり起用してきた。同じベテランでも、遠藤、長谷部とは事情が大きく違う。彼が「ボランチ」として、どこまでやれるのか。オーストラリア戦後半のプレイを見せられると、もっと見てみたい気はする。

 逆に、2018年まで年齢的には十分持ちそうだが、先行きに不安を感じるのは香川だ。決定的な仕事ができない。ゴールが奪えないばかりか、そのシーンに有効に絡むことさえできなかった。この日に限った話ではない。ザックジャパン時代からそうだった。

ポジションが左から真ん中に移り、水を得た魚になるのかと期待したが、目下のところ迷走中だ。確かに俊敏ではあるが、周囲と調和していない。浮いた存在に見える。守備もサボらずに頑張っているが、貢献度は低い。独自の世界にはまり込んでいる感じだ。アギーレは香川とどう向き合うのか。アジアカップを戦う上での大きなカギだと僕は見る。

 逆に、好印象を抱かせたのは、現在23歳の酒井高徳。多少荒いが、いま一番キレている選手だ。ホンジュラス戦は左を務めたが、この日は右。左右両方できるところも彼の強みだ。サイドバックとはいえ、これからの日本代表を背負っていく中心選手の一人になると見た。

 ベテランに頼ることは、若手の出場機会を奪うことと同じだ。選手起用の優先順位を誤ると、日本の将来は怪しくなる。本番は2018年。アジアカップではない。

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