なでしこの敗因。埋まらなかったW杯組と若手の差 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 若手の成長を促すことで、思いがけず新たに構築できたのが、宮間―川澄のホットラインだ。昨年まで、宮間と川澄は両サイドハーフとしてピッチ上で互いの動きを視野に入れてはいたが、直接的な連係プレイが頻繁に行なわれる関係性にはなかった。

 今大会では、ボランチの宮間と左右サイドハーフに入った川澄との間にはコミュニケーションと経験を十分に生かしたホットラインが生まれた。これは従来のなでしこジャパンでも見られなかったこと。今大会一番の収穫だ。準決勝のベトナム戦前半で見せた川澄への絶妙なスルーパスを取って、「これまでのなでしこでもあのパスはナホ(川澄)に出してあげられなかった」と宮間は振り返る。

 そして、有吉も吹っ切れたプレイをしたひとり。

「5月のアジアカップが個人的には不甲斐無かったので、もっと上を目指したプレイをしないといけないって思ってました」

 ゲームを読み取り、効果的なビルドアップをするサイドバック。中盤との信頼関係がなくては、前線へ上がってはいけない。今大会では同部屋だった宮間、川澄、有吉の3選手がどれだけ話をしたのか、想像できる厚みを見せた。

 選手の見極めを行なったアジア大会。約20日後には来年のワールドカップ決戦の地・カナダ遠征を控えている。そこにはヨーロッパ組の招集も予定されており、アジアカップ、アジア大会招集組から抜擢されるメンバーが現れれば、新たな競争が芽生える。佐々木監督がどのような人選をするのか注目だ。

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