初陣で示された、アギーレ監督とザックの鮮明な「違い」とは (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Fujita Masato,Takahashi Manabu

 これまでの日本代表監督は、「誰にでも門戸は開かれている」と口では言いながら、結局招集メンバーにさしたる変化はなく、たまに新戦力が選ばれても試合では起用しないケースがほとんどだった。だが、今は違う。誰にもチャンスはある。アギーレ監督はそのことを実戦で証明したわけである。

 率直に言って、試合内容には不満が残る。遅々としてボールが前に進まぬ状況に苛立ちも覚えた。

 しかし、今からチームを固め、いい試合内容で勝利したとして、それが4年後のロシアに直結するわけではない。

 多くの選手を試合で試して見極めていくことは、長期的視野に立つ重要な作業であり、ひいてはJリーグのレベルアップにもつながるものである。

「できれば2試合で23人全員を使いたい」

 そう語ったアギーレ監督の言葉はどうやら掛け声だけではなさそうだ。

 当然、次のベネズエラ戦(9月9日、横浜)では、今回出場機会のなかった選手にチャンスが巡ってくるだろう。初選出5人のなかでは唯一ウルグアイ戦で出場機会のなかったDF松原健や、まだ国際Aマッチに出場したことのない柴崎岳などは当然、「次はオレの番」と気持ちの準備を整えているはずである。

 日本の代表として戦う以上、負けていい試合はない。それはある意味で正しいが、そのために自分たちの最大目標が何であるかを見失ってはいけない。

 アギーレ監督は、これまでの日本代表監督があまり持ち合わせていなかった感覚を持っている。そのことがはっきりと伝わってくる初陣だった。

 今後への期待を高めるものは、何も試合内容ばかりとは限らない。

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