初陣で示された、アギーレ監督とザックの鮮明な「違い」とは (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Fujita Masato,Takahashi Manabu

 だが、ピッチに立った顔ぶれはというと、南アフリカ・ワールドカップのメンバーをベースにし、新たに経験のある選手を何人か招集メンバーに加えていた程度。いくらか"ザック色"に染められてはいたが、基本的には過去の遺産を引き継ぐ形で初めての試合に臨んでいた。

 それに比べて、今回の"アギーレ色"は鮮明だった。

 スタメン11人のなかに初選出の選手がふたり(DF坂井達弥、FW皆川佑介)含まれていたのをはじめ、途中出場のFW武藤嘉紀、MF森岡亮太を含めれば、4選手がこの試合で代表デビューを果たしたことになる。

途中出場のFW武藤ら積極的に新戦力を起用したアギーレ監督途中出場のFW武藤ら積極的に新戦力を起用したアギーレ監督 しかも、新戦力は総じて自分の特徴を発揮できていた。アギーレ監督は言う。

「今日はチーム全体に目を向けるより、選手個人を見るほうがより満足を得られた」

 まさにこれこそが収穫だろう。果敢なプレイで初ゴールまであとわずかに迫ったFW武藤はもちろん、FW皆川はDFを背負える強さと高さを見せた。DF坂井は失点につながるミスはあったが、落ち着いてボールを扱い、ヘディングの競り合いではほとんど勝っていた。また、MF森岡にしても出場時間はわずか数分ながら、得意のスルーパスを通すなど才能の一端を披露した。

 重要だったのは新たな選手がただ呼ばれて練習に参加しただけでなく、出場機会を与えられたことだ。デビュー戦でフル出場した坂井は言う。

「高いレベルで試合をやるなかで、やれることとやれないことは自分のなかではハッキリした。そこを練習して、こういうところ(日本代表)で長くプレイできるようにしたい」

 また、同じく代表デビューを果たした皆川は「ファーストチャンスで決められなかったのは反省しているし、責任を感じている。あれを決めていれば試合展開は楽になっていたはず」と悔しがったが、それも実戦を経験したからこそ味わえたものである。この試合は今後の彼らの成長を促す、大きなモチベーションとなったはずだ。

 それは今回選外となった他の選手、とりわけJリーグでプレイする選手にも言えることだ。

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