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豊田陽平、W杯日本代表入りにかけた半年間を振り返る (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

「(2014年シーズン第4節の)新潟戦で、しょうもないシュートを僕は外していました」と豊田は白状する。右からのクロス、中でもつれた後に目の前にボールが転がった。右足で押し込むだけだったが、右ポストに直撃させた。“あり得ない”と自分が許せなかった。

「ストライカーは同じミスを繰り返してはいけない。そこを“しょうがない”としてしまうと、当然のように取れていたゴールが突然、取れなくなる怖さがあるんです。負のスパイラルと言うんですかね。これは一度はまると、なかなか抜けられない。だから、“なんで外したのか”をとことん考えました。結論として行き着いたのは、“GKを意識し過ぎた”ということ」

 新潟のGK、守田達弥は京都サンガ時代にチームメイトだった。勝手知ったる相手との駆け引きに、考え過ぎた。その理由に納得し、彼は改善できる自信を得られると、次の試合に向けてひたすら良いイメージだけを持った。大きな体だけに野放図に見えるが、ゴールへのアプローチは繊細で緻密だ。論理的に納得できないと、本人は我慢ならない。

 豊田はプロ4年目でモンテディオ山形に移籍し、当時の監督だった小林伸二から指導を受け、ストライカーとしての腕を本格的に磨いている。それまでは、体力や感覚に頼っていた。合理的な取り組みをするようになってから、得点力は向上したという。シュートを入れるたび、シュートを外すたび、その成功と失敗から抽出した経験を引き出しにしまっていった。

「次のガンバ(大阪)戦(第5節)は、負のスパイラルに入らないためにも、絶対ゴールが欲しい試合でした。そして後半(27分)に、クロスに合わせてヘディングでゴールすることができたんです」

 豊田はその瞬間を振り返ったが、代償も払った。ヘディングを打った直後、相手のセンターバックが遅れて入り、激しく交錯。相手の腕が口に当たり、かなりの衝撃を受けた。“歯に何か当たる”という違和感を覚え、下の歯が欠けていたことが分かった。試合後の治療で欠けた歯をボンドで付けてもらうと、休むことなく復帰した。休養している暇はなかった。

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