【なでしこ】U-17女子W杯、準決勝で高まった団結力。目指すは「世界一」 (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 攻撃に弾みがついたのは、守備陣の奮闘によるところも大きい。守備陣が今大会を通してテーマとしているのがチャレンジ&カバーだ。準決勝でもそのテーマが変わることはない。この日、もっとも力を発揮したのはその"カバー"の部分だ。

 中でもそれを体現していたのは、今大会直前にFWからCBへコンバートされたばかりの大熊良奈(JFAアカデミー福島)。大会期間中、大熊は徹底して守備力向上に全力を注いだ。ヘディングひとつを取っても、FWならば速いボールに誰よりも速く強く合わせてゴールを狙うが、CBならば味方ゴールから遠ざけるためにより遠くへ跳ね返す。同じゴール前にいながら、大熊に求められるスキルはこれまでと真逆のものになった。

 FWとして鍛えられてきた高さ、スピードはこのチームのCBに必要不可欠な要素。文字通り1戦ごとに大熊は守備力を身につけてきた。ペアを組む市瀬のフォローを受けながら、必死にCBをこなしてきたのだ。

 そんな大熊が、準決勝でチームを救い続けた。開始直後にいきなりカステジャノスに攻め込まれるが、大熊が先に体を入れて止める。26分には、ガルシアから再びカステジャノスにカウンターをつなげられるが、ここにも大熊が立ちはだかる。集中を切らすことなく大熊は後半、日頃頼りきっている市瀬のパスミスから陥ったピンチの際も、完璧なカバーリングを見せたのである。

「......やりきりました」試合後、疲労感の中にも充実した表情を浮かべた大熊。ボランチとの連携も含めて、大砲・カステジャノスを完璧に封じたことで、攻撃陣は安心して攻撃を組み立てることができた。守備に入ってわずか一カ月。頼れるCBがまたひとり誕生した。

 残すは決勝のみ。彼女たちは決勝に残ることを目標にしてきた訳ではない。チーム発足時から、目標に掲げてきたのはただひとつ――"世界一"。団結力はこれまでにないほど高まっている。

 奇しくも相手は、グループステージ開幕戦で激闘を演じたスペイン。初戦と異なる緊張感で迎える最後の相手として、不足はない。世界一をかけた彼女たちの挑戦は、4月4日(現地時間)、コスタリカ・サンホセのナショナルスタジアムで完結する。

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