ベルギー戦勝利で浮かれる日本に、警鐘を鳴らす遠藤保仁 (2ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 なるほど"ピッチの指揮官"とも呼ばれる遠藤だから、ベンチから戦況を読むのも的確だ。修正ポイントを頭に叩き込み、後半のピッチに入った。

 逆転ゴールが生まれたのは、まさに攻撃参加した遠藤のアシストからだった。左サイドバックの酒井高徳とのワンツーから相手ペナルティーエリアの角まで侵入し、素早く右足のアウトサイドで本田圭佑にパスを通してファインゴールを演出した。普段は下がり目の位置で攻撃にリズムを作ることが多い遠藤だが、高い位置なら高い位置なりのプレイがある――。そんなことを雄弁に物語るプレイだった。

 また、遠藤がポジションを高くすることで、味方のセンターバックの前にスペースが生じた。後半、森重真人や吉田麻也が積極的にボールを持ち出す機会が増えたのは、遠藤のポジショニングと無関係ではないだろう。こうしてセンターバックがボールを運べば、中盤に対する相手のマークがどんどんズレていく。アップをしながら、その様子を見ていたDF今野泰幸は「後ろからの組み立ては、ベルギーより日本の質のほうが高かった」と指摘する。

 後半から遠藤を投入して流れを変える――。もしかしたら、ザッケローニ監督はそれを狙ったのかもしれない。だが、いずれの試合でも前半、遠藤が不在だったがゆえにその存在の大きさを改めて感じさせる内容でもあった。怪我が治れば、おそらく先発に返り咲くのではないだろうか。

 一方、遠藤の冷静な目はピッチ内だけでなく、チームにも向けられている。

「(今年最後の試合を)いい形で締めくくれたのは良かったけれど、この2試合だけで判断するのはよくない。まだまだ課題は多いからね。それを克服するためにも、まずは(所属する)クラブに戻って、個々が(自分の力を)どれだけ伸ばせるか。3月まで代表の活動はないので、それまではそこに集中すればいいと思う。チームの課題については、次に集まったとき、みんなで話し合いながら、強いチームにしていきたい。今の状態が自分たちのピークだとは思わないけど、いつ、リズムが崩れるかわからないのが代表チーム。オランダ、ベルギーとの2試合である程度の手応えはつかめたとはいえ、最低限この精度を保ちつつ、常に満足しないでレベルアップを図らなければいけない。そして、3月から本番までの間にチームを仕上げていければいい」

 遠藤にとってブラジル大会は3度目のW杯になる。過去2大会の代表チームはいずれも紆余曲折の末、W杯本番を迎えている。

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