川島永嗣からは見えていた「守備の穴」と「攻撃の欠陥」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano MIKI

ブラジルW杯まで210日
『ザックジャパンの完成度』
連載◆第25回:川島永嗣

 10月に欧州遠征を実施した日本代表は、セルビア(0-2)とベラルーシ(0-1)と対戦し、2連敗を喫した。その直後、GK川島永嗣は、鬼の形相でこう吐き捨てた。

「相手に隙を見せてやられている。このままじゃ、W杯で勝つ確率はどんどん低くなってしまう」

 主将の長谷部誠とともにチームのまとめ役を果たし、時には喝を入れるなどして、代表の精神的な柱として君臨している川島。この2試合では、結果はもちろん、内容にも満足がいかなかったのだろう。ミックスゾーンで受け答えする際には、眉間の皺(しわ)がほぐれることが一度もなかった。

10月の欧州遠征で2連敗を喫し、厳しい表情を見せた川島永嗣。10月の欧州遠征で2連敗を喫し、厳しい表情を見せた川島永嗣。 不満の矛先はどこにあったのか。一戦目のセルビア戦を前にして、川島はこんなことを言っていた。

「(ホームの)9月の試合は勝ちましたけど(グアテマラ戦=3-0、ガ-ナ戦=3-1)、相手との力関係もあったので手放しで喜ぶわけにはいかなかった。ただ、守備の自信を取り戻すきっかけにはなったと思います。前線からの守備が良くなったし、ラインコントロールも無難にやれていた。もう1回、自分たちはどうやって守備をするのか、改めてその意識づけができたと思う」

 一度は崩壊しかけた守備は、良くなる兆しが見えてきた。それについては一定の評価をしたうえで、こう続けた。

「今回のセルビア戦、ベラルーシ戦は、第一に、ホームでできた守備がアウェーの試合でも実践できるかどうか。アウェーで、しかも強い相手になれば崩されるシーンが出てくる。そのとき、選手間でしっかりカバーできるかどうか。例えば、誰かが前にプレスに行くタイミングを間違えたら、後方の選手はそれに対応して耐えられるのかとか、DFラインで誰かがラインの上下のタイミングを間違えたら、それを誰かがカバーして対処できるのかとか。そうした状況で、お互いをフォローし、臨機応変に対応することがどれだけできるか。そんな、ちょっとしたことが勝負の分かれ目になるので、細かいところをきちんと突き詰めていきたい。それは試合でしかできないですし、今回の大きなテーマのひとつだと思っています」

 だが、川島の思い描いていたような、成果も結果も十分には得られなかった。大量失点こそ免れたが、それぞれの試合で勝敗を分ける失点を食らってしまった。ゆえに試合後は、不満が募る一方だったのだ。

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