U-20女子W杯出場を逃したヤングなでしこの前に、不気味な「アジアの壁」 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 すでに出場権を獲得している北朝鮮が引く必要があるのか――前半から接触プレイでも過剰に痛がり、時間稼ぎをする北朝鮮にボランチの猶本光は確信する。「引き分け狙いだ」。日本に残された道は攻めるしかない。しかし、どんなに前線にボールを運ぼうとも、ゴールゲッターとなるはずの田中美南にはマークがベッタリ。田中にボールが入ると瞬時に2、3人に囲まれ、前を向くことすらままならない。

 それでも主導権は終始日本が握っていた。いや、握らされていたというべきかもしれない。自陣で日本の攻撃を跳ね返し、タイミングが合えばカウンターを狙えばいい北朝鮮だけでなく、徐々に"時間"という敵も加わる。スコアはまだ動かない。「自分も攻撃に参加したかったけど、ラスト20分位まではバランスを取っていようと。上がるに上がれなかった」という猶本。

 しかし、時折繰り出されるカウンターになかなかポジションを離れられない。いつもならリスクを冒してでも前線に上がる猶本をとどめたのは他でもない「負ければ終わり」という現状だった。前半と異なる攻め方にトライし、自らが攻撃に参加したくとも、そのリスクを天秤にかけるとどうしても動くことができなかったのである。

 最後の最後まで攻め続けた日本。ゴールに肉薄するもとうとうこじ開けることなくスコアレスドローに終わった。ただひとつのゴールで状況は一変したはず。猶本は涙をこらえながら、言葉を絞り出した。

「結果がついてこなかったんで完全燃焼とは言えない......。でも、やれることはやったつもりです」

 U-17世代から代表として活躍してきた猶本。昨年はヤングなでしことして世界と戦った。そして、今大会彼女の腕にはキャプテンマークが巻かれていた。「下の世代の選手たちも、ミーティングでは積極的に発言するし、チームのために働く意識もみんなある。キャプテンだからってすることはそんなにないんです」――大会中、猶本はこう語っていた。

 しかし、実際にチームが変わったのは韓国に敗北してから。それまでは、チームになっているようでなっていなかったのだ。トレーニングでもその様子が垣間見えることがあった。猶本が周りを鼓舞しようと声を張り上げても、呼応する選手がいない。それは試合でも変わらなかった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る