ガーナ戦の勝因は「プレスバック」。3得点より大事な危機察知の意識

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 この2試合(グアテマラ戦、ガーナ戦)の起用法を見る限り、ザッケローニ監督は、大迫勇也よりも柿谷曜一朗を1トップのファーストチョイスとして考えているようだ。

 大迫にもう少し時間を与えてもよかったと思える一方で、指揮官の思惑どおり、試合を追うごとに、柿谷がチームにフィットしてきているのは間違いない。ポストに入った柿谷がワンタッチでさばいて2列目の3人――本田圭佑、香川真司、清武弘嗣を活かそうとする場面が何度も見られ、2列目の選手たちも、DFの視野から外れるように大外に回り込む柿谷の動きを見逃さなかった。柿谷が言う。

「ファー(サイド)に回り込むのは監督からも話があったし、僕がディフェンスラインを引っ張れば、バイタル(エリア)が空きますからね。それに、あの3人はダイレクトが一番活かせると思う。多少難しくても、ダイレクトで正確に(ボールを)落とすことを意識しています」

ガーナ戦ではチーム一丸となって相手ボールを奪おうとする姿勢が見られたザックジャパン(写真は柿谷曜一朗)ガーナ戦ではチーム一丸となって相手ボールを奪おうとする姿勢が見られたザックジャパン(写真は柿谷曜一朗) これまでのザックジャパンは、岡崎慎司が不在になると、途端に裏への選択肢がなくなってしまう傾向が強かった。だが、相手のディフェンスラインと駆け引きし、裏を狙える柿谷が1トップに入ったことで、そうした懸念も解消された。

「(柿谷)曜一朗は足もとと裏、両方いける。活かし切れれば、遅攻と速攻を使い分けられるようになる」と今野泰幸が言えば、長友佑都も、「あいつはタメを作れるし、パスも出せる。何でもできるから、相手も的を絞りにくくなる。攻撃のバリエーションは増したと思いますね」と語った。

 柿谷がチームの力になったのは、攻撃面だけではない。守備面での貢献度も、決して低くなかった。

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