【なでしこ】競争相手は世界のトップ。大型FW大滝麻未が着実に成長中 (3ページ目)

  • 松原渓●取材・文 text by Matsubara Kei
  • photo by Getty Images

■世界トップレベルのチームメイトたちとの競争

 今シーズン、大滝が起用されているのはトップ下、つまりセカンドストライカーのポジションだ。エースストライカーであるスウェーデン代表のFWロッタ・シェリンの背後からの飛び出しや、前線からの積極的な守備で貢献している。

 リヨンのキャプテン、ソニア・ボンパスターは「左足も右足も蹴れるし、チームにも順応してきています。入団当初に比べてフィジカルも強くなったわ」と大滝の成長を認める。

 コミュニケーションにおいては言葉の壁も乗り越えなければならない。

 大学時代はカナダのヨーク大学に留学し、大学のサッカーチームでプレイしていたこともある大滝は、英語を自在に操るが、チームメイトには英語を話せる選手はそれほど多くない。しかし、そんな言葉の壁も彼女は楽しんでいるようだ。

「遠征の時、部屋はいつもウェンディー(・ルナール)と一緒です。ウェンディーは英語をしゃべれないから、私がメールをしていても、『これはこうで、ここはこう』とうるさいぐらいにフランス語を教えてくれます(笑)。フランス語には女性名詞と男性名詞があって、特にその間違いをものすごく直されますね。そのせいか、今シーズンはフランス語がだいぶしゃべれるようになって、監督と直接話ができるようになりました。そうしたら、何かが変わったというか......。頑張っているんだなと評価してくれている感じがします。そういうところをちゃんと見ていてくれているのは嬉しいですね。ちなみに、監督は英語で話しかけられても普通にフランス語で返すぐらい頑固です(笑)」

 チームスタッフによると、「彼女のフランス語はかなり上達した」という。言葉の壁もハンデと感じさせないほど、その持ち前の明るいキャラクターがチームに受け入れられていることも大きい。

「彼女の笑顔はチームを明るくしてくれるし、彼女の存在によってチームにポジティブな空気がもたらされている」と話すのは、ソニアだ。

 大滝によると、個性派集団をまとめるキャプテンのソニアは、チームきってのいたずら好き。今回の日本遠征では、こんなことがあった。
「みんなでお昼ごはんを食べている時に、監督がいな隙に、ソニアに顔に水をかけられたんです。すぐに監督が戻ってきて、そのときは何も仕返しができないような状況で(笑)。仕返しに、彼女が(宿舎の)部屋にいない時に、枕を隠しておきました。最終的に私の枕を取られましたけど(笑)」

 また、フランス代表の「女ジダン」ことルイザ・ネシブは、「ツンツンしているように見えるけど、とっても優しい人」と、大滝は笑顔で話す。実力派で美女プレイヤーとしても注目されるネシブは、たしかにピッチ外でも近寄り難いオーラを放っているが、大滝が試合に出られなかった時に、落ち込んでいるといつも「真っ先に声をかけてくれる」という。

 そんな中で、大滝自身も「昨シーズンは(リヨンが)自分のチームという感じがしていなかったけれど、今はコミュニケーションも取れるようになって"自分の居場所"だと思えるようになって、チームのことももっと好きになった」と、チームの一員として成長できていると感じている。

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