【日本代表】ブラジルに大敗した本当の理由は監督にあり (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 同じ方法論で強化するザックジャパンも、失速パターンに陥りそうな気配がある。この強化策は代表チームには不向きなのだ。20人全員に出場の可能性がある強化策でないと危ないのだ。にもかかわらずそこに走る理由は単純だ。目の前の試合にベストメンバーを送り込もうとする日本的な習慣である。それこそが代表チームの可能性を狭めてしまう最大の原因になる。

 監督のアイデアも必然、少なくなる。メンバーの固定化は、監督のアイデアの固定化に他ならない。幅の広い柔軟な思考は生まれにくい。様々なケースへの対応が利かなくなる。強者に早々と0-2でリードされる展開などは、まさに想定外のケースになってしまう。

 ザッケローニの最大の問題は、本場で十分な経験を積んだ欧州人監督であるにもかかわらず、流れを変えるためのメンバー交代を行なえないことにある。ピッチ上の11人が、冷静さを欠き、本能的なプレイを見せ始めても、前の試合と同じ交代しかできなかった。少なくともザッケローニは、いかなる状況にも対応できるアイデア豊富な指揮官とは言い難い。

 日本はアジア予選では強者面ができるが、W杯本番では弱者に転じる。フランス、ブラジル級を倒さないと、過去最高位は望めない。番狂わせをいかにして起こすか。我が日本代表には、番狂わせが起こせそうな監督が必要だ。

  サッカーは運が3割絡むスポーツだ。まさかのクリーンシュートが決まってしまったり、PKを取られたり、想定外の出来事は茶飯事だ。その時の対処法こそ、監督に求められる最大の資質になる。ピッチ上の混乱をどう正すか、どのような手を打って整えるか、が問われる。それを見過ごして「選手の経験不足」を敗因に挙げるのは、経験を積んだ監督のすべきことではない。

 選手の力不足には納得できる。日本のレベルはまだ低いからだと割り切れる。だが本場からやってきた監督の冴えのない交代には納得できない。責められるべきはまず監督。選手だとは思わない。

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