【名波浩の視点】イラク戦でも課題克服ならず。2点目が取れない理由 (2ページ目)

  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 それでも、ふたりとも相手のマークを剥(は)がす努力を欠かさなかった。遠藤はサイドにスライドすることでセンターバックにスペースを空けて、うまくポゼッションできるような形を生み出していた。常にトップ下に君臨していた本田も、この日はバイタルエリアのところに止まることなく、FWの前田遼一が位置するような高さまで動いて、攻撃における深さを作っていた。そのうえで、前田とはかぶらないように、お互いに気を遣いながら、近すぎず、遠すぎずの距離を保って、チャンスをうかがっていた。

 また、彼らに限らず、日本はサイドでは2対2の状況を作るのが非常にうまく、そこからいい形を作っていた。左では清武弘嗣と長友佑都が、右では岡崎慎司と駒野友一が、相手よりも素早くふたりのコンビネーションを形勢し、サイドから効果的に崩すシーンが再三見られた。

 そうした戦いぶりを振り返ってみると、日本の選手たちの、ゲームの中で修正する能力というのは、かなり向上しているな、と感じた。特にこの試合では、予想とは違う展開の中でも動じることなく、「どうすればいいの?」とベンチを見たり、監督の指示を仰いだりせず、選手自らが動いて悪い流れやリズムなどを修正していた。併せて、スローインなどでゲームが止まったときに、ザッケローニ監督が指示を与えて、よりよい展開を築こうとしていた。イラク戦前のUAE戦ではできなかったことだけに、チームとしては確実に進歩していると考えていいと思う。

 これで、日本は勝ち点10。予選突破もほぼ見えてきた。とはいえ、世界で戦うことを考えれば、まだまだやらなければいけないことがある。

 なかでも重要なのは、2点目を取る、ということ。

 最終予選3戦目のオーストラリア戦から、親善試合のベネズエラ戦、UAE戦、そしてイラク戦と、すべて1点に止まっている。オーストラリア戦やベネズエラ戦では、2点目を取っていればきっちり勝利を得られたはずだし、イラク戦でも追加点が取れれば、はっきりとした実力的な格付けができていたと思う。しかしトドメをさすことができず、次はそれなりに戦えるという自信をイラクに与えてしまったような気がする。

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