【五輪代表】日本、決勝トーナメント進出!
永井の一撃をもたらした冷静なゲームプラン (2ページ目)
守備で後手を踏む展開が続いては、いい攻撃につなげられるはずもない。象徴的だったのは、38分のシーンだ。
山口螢が相手MFハルジャのドリブルを止め、この試合で初めてと言っていいほどの最高の形でボールを奪うことに成功した。3日前のスペイン戦であれば、その瞬間、前線の選手が一気に相手ゴールへと向かってダッシュし、カウンターアタックが発動されていたはずの場面である。
ところが、前線の反応が鈍く、動き出す選手がいない。山口は前方へパスを送ることができずに終わった。
ようやく日本の攻撃に少しずつリズムが生まれたのは、後半に入ってからである。吉田が語る。
「前半(のピンチ)をしのげたんで、後半は体もちょっと動くようになったし、乾いたピッチ(でボールが走らないこと)にもみんなが慣れたことで、スムーズにやれるようになった」
しかも、時間の経過とともに動きが良くなる日本とは対照的に、「モロッコは70分くらいから急激に失速した」と吉田は言う。
実際、この試合で日本がDFラインの裏を取ってシュートにつなげたのは、わずかに2回に過ぎないのだが、そのいずれもが70分を過ぎてからのものだった。1本は、79分に山口が3列目から飛び出して打ったシュート。そして、残る1本が、84分に生まれた永井謙佑の決勝ゴールだったのだ。
すなわち、日本は動きが重いなりに試合序盤は粘り強く戦い、相手の動きが落ちた終盤に永井のスピードという「伝家の宝刀」で勝負に出た。
ラストパスを送った清武弘嗣が「あの辺に落とせば、あとは何とかしてくれると思った」と言えば、永井は、「キヨ(清武)が自分の特徴を生かすように裏に出してくれたので、あとは自分がゴールに流すだけだった」と振り返る。あうんの呼吸が生んだ、値千金のゴールだった。
しかし、試合展開を考えれば、勝ち点3を取れたことは、いわばボーナスのようなもの。関塚監督が、「モロッコは非常に強いチーム。慣れるまでに時間がかかったが、90分間粘り強い守備を見せてくれた」と話したように、劣勢の中でも集中を切らさず、無失点に抑えたことにこそ、この試合の価値がある。
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