【なでしこジャパン】「連動性と走力」の勝利。あきらめない心で手にしたW杯優勝 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text&photo by Hayakusa Noriko

「絶対に私たちの方が勝ちたい!って気持ちが強かった」と鮫島彩が言うように、彼女たちはあきらめていなかった。そしてチャンスは訪れた。117分、宮間のCK。ニアに走り込んだ澤が右アウトサイドで合わせる。ゴール。日本が再び同点に追いついた。

 延長後半終了間際には、岩清水梓がモーガンの突破を退場覚悟のファウルで阻止。佐々木監督はピッチから出る岩清水から視線を外さず、ベンチに戻ってくると声をかけた。「それでいい」。直後、延長後半終了のホイッスルが鳴り響いた。

 この時点で勝負は決していたのかもしれない。たしかに日本はPKが決して得意ではない。しかし、それ以上にアメリカには「なぜこんな展開になったのか」という焦りや混乱、割り切れない思いが120分を通して蓄積していたはずだ。失うものがない日本の方が精神的に有利だった。

 さらにGK海堀あゆみのセービングが冴えわたった。1本目をストップして追い風を生みだすと、2本目にミスを誘い、3本目を再びセーブ。日本4人目のキッカーである熊谷紗希のプレッシャーを取り除いた。

 ピッチでは澤が、近賀が、鮫島が、そしていつも動じる表情を見せない宮間までが、祈るように静かに目を閉じ、その瞬間を迎えようとしていた。

 熊谷の蹴ったボールがゴールネットに吸い込まれた瞬間、ピッチは歓喜に包まれた。はかなくも強く、まっすぐで不器用な、けれど世界で一番美しい花がそこにはあった。

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