【なでしこジャパン】「連動性と走力」の勝利。あきらめない心で手にしたW杯優勝

  • 早草紀子●取材・文 text&photo by Hayakusa Noriko

 日本がワールドカップで優勝する。それがこんなに早く、現実になろうとは誰が想像しただろうか。

「実感がわかないんです」。

PK戦までもつれたW杯決勝を制して優勝したなでしこジャパン。世界ランク1位のアメリカを倒し世界の頂点に立ったPK戦までもつれたW杯決勝を制して優勝したなでしこジャパン。世界ランク1位のアメリカを倒し世界の頂点に立った 決勝の翌日、金メダルを掲げた選手たちは口ぐちに同じ言葉を発した。試合ごとの成長は感じられるが、それが金メダルに直結している実感が持てないのだろう。それほど、無心でピッチを走り、ボールを追い続けた3週間だった。

 決勝の相手はアメリカ。以前は雲の上の存在であり、そこから倒さねばならない相手へと変化してきた世界ランク1位。そして7月17日、ついにその強敵に勝利する時がやってきたのである。

「決勝でアメリカと対戦できるなんて」。決戦前日に澤穂希はこう話していた。10代でアメリカの強さに触れて愕然とし、自らその中へ飛び込んでいった20代。アメリカプロリーグでの経験は、澤を大きく成長させた。

 そのアメリカに恩返しするときがやってきた。もちろんイニシアティブが取れるとは思っていない。それでも、「勝機は十分にある」。そう信じて疑っていなかった。

 しかし、試合の入りはあまりよくなかった。相手に合わせてしまい、攻守に連動するタイミングがズレてしまう。そのためセカンドボールを奪うことができず、ラインは間延びする。その悪影響がどんな形になって現れるか、イングランド戦で選手は学んでいたはずだった。

 阪口夢穂がミドルシュートを狙い、近賀ゆかりが右サイドからビルドアップを試みるなど、ハイプレッシャーの中でも、攻撃のバリエーションで変化をつけようとする。

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