【名波浩の視点】オーストラリア戦で改めて感じた「4番」「10番」コンビの重要性 (2ページ目)

  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 圧巻だったのは、前半32分、敵DFの厳しいチェックを受けながらも、長友佑都にスッとパスを出して決定機を生み出したシーンだ。結局、長友の高速クロスには誰も合わせられなかったものの、あのシーンで香川はいろいろな選択肢を持ち合わせていた。シュートしかり、ドリブルしかり、長友へのパスしかり、何でもできる状況を作り出し、そんな香川をオーストラリアDF陣は相当脅威に感じていたのではないだろうか。

 それだけ香川が前を向いて勝負できたのも、本田圭佑との関係性が申し分なかったからだ。この日はタテの関係を築く回数がとても多く、そのコンビネーションから再三決定機を生み出していた。予選3試合を通しても、ふたりの距離間は常に良かったけれども、オーストラリア戦では一層際立っていた。香川があれだけ前を向いて、あらゆる選択肢を持てることを考えると、日本の攻撃において「10番」(香川)と「4番」(本田)の密接な関係性が重要であることを、改めて認識させられた。

 それともうひとつ、この試合で気づかされたことがある。GK川島永嗣の存在の大きさだ。今野、吉田麻也というセンターバックふたりが絶対的な守備のリーダーだと思っていたけれども、最後方にいる川島が危険をすかさず察知して、すごく大きな声を出して、全体のサポートをしていた。ポジション取りも素晴らしく、目立たないところで再三チームを助けていた。

 さて、試合結果に関しては、レフェリーの判定を考えると少なからず不満はあるものの、グループ最大のライバル相手に、しかもアウェーで引き分けというのは上出来。予選3戦で勝ち点7というのも立派だと思うが、選手たちにとっては、誰もが「3連勝して、勝ち点9、失点0」ということを目標にしていただけに、1-1という結果がこれからさらにレベルアップしていくうえでの糧になると思う。向上心の高い彼らにとって、いい刺激になる試合だったのではないだろうか。

 今後に向けては、これまでどおりの戦い方をしっかりと継続していくべきだと思う。悪いピッチの中でも、自分たちのポゼッションサッカーは十分に通用した。それも、オーストラリアのほうが走らされていただけになおさらだ。加えて、ザッケローニ監督がずっと徹底してきた守備のスターティングポジションとコンパクトフィールドというものを、このチームの最低限のルールとして実践していくことが大事になる。実際、予選3戦でそれを純粋に遂行してきた今の代表からは、さらなる伸びしろを感じた。

 当然、チーム全体の底上げも必要だ。右サイドバックの酒井宏樹はもちろんのこと、FWも3試合フル出場した前田遼一を脅かす存在が出てこないといけない。ハーフナー・マイクや森本貴幸、李忠成など、アタッカー陣は激しいポジション争いをしてほしいと思う。チーム内競争は不可欠なだけに、既存の選手のライバルとなる面々はもっともっと必死になるべきだろう。

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