【なでしこ】リーグ屈指の名勝負で躍動した岩渕真奈の「成長」と「悔し涙」 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 チャンスがあっただけに決めきれなかった思いと、ここで退かなくてはならない現実。岩渕の悔し涙は止まらなかった。「絶対に勝つ!」と、中盤で澤とマッチアップした際にも、強気に突っ込んでいった。並々ならぬ決意で臨んだ試合だっただけに、無念の思いは募るばかりだったのだろう。

 それでも試合後、「(足は)大丈夫!」と、やや右足を引きずりながらも岩渕は笑顔を見せた。

 その岩渕がピッチを去った試合は後半、川澄の突破を止め切れなかった有吉のファウルで与えたPKを、INACがきっちりモノにして勝利。数々の見せ場のあった名勝負で、大きな勝ち点3を手にした。

 開幕当初、上位チームは下位チームとの対戦が続き、大味な試合が続いた。昨年からの「なでしこブーム」の名残で観客数は増えていたが、本来のサッカーの魅力が伝わっているとは思えなかった。しかし中断期間を前にしたここ数試合は、ようやく拮抗したゲームが見られるようになった。“個”を見に来る観客をいかにして、“チーム”に引き込むかは、選手たち自身にかかっている。それが、サッカー選手の宿命であり、義務だろう。

「実は試合中に、『あれ、これ良い試合じゃないかな』って思える瞬間があったんです。勝ちたかったけど、今日の試合を見てくれた人がひとりでも『ああ、面白かったな』と思ってくれたらうれしいですよね」

 こう語ったのは、ベレーザの岩清水。名勝負の積み重ねが、リーグの発展につながっていくはずだ。

 6月11日からは、なでしこジャパンがスウェーデン遠征に向けて活動をスタート。今日の敵は、今度は頼もしい仲間として、世界と戦うことになる。約3カ月間、敵対するチームとして高め合ってきたなでしこたちが、ここからロンドン五輪までにどんなチームとして生まれ変わるのか、まずはスウェーデン遠征でその姿が見られることだろう。

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