【五輪代表】左からの新たな可能性を感じさせる、もうひとりの「酒井」 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 赤木真二●撮影 photo by Akagi Shinji

 守備ではそれなりの存在感を見せた酒井だが、周囲との連係が重要になる攻撃面では、不完全燃焼に終わった。

「ワンタッチでパンパンと回せて、リズムを作れた時間帯もあったけど、そればっかりになったり、タテに急ぎ過ぎたり、攻撃をどうするのか、狙いがはっきりしないときがあった。ボランチが(サイドに)降りてきてボール受けるとか、センターバックからのパスも少なかった。そこで、(自分が)上がるだけではなく、自分のところでボールを落ち着かせることもできたら、と思っていたけど......。(トルコ戦では)その矢先に怪我をしちゃって、悔しかった」

 今年1月、所属するシュツットガルトでの評価が高まって以来、14試合連続フル出場を果たしている酒井。その要因は、守備面の安定もさることながら、サイドからの攻撃の組み立てでチームを支えている点にある。

 対戦したドルトムントの香川真司は「(攻撃の)組み立ての面での存在感はとても大きい」と認め、シュツットガルトの同僚である岡崎慎司も「周りが攻撃ばかりしたがる選手でやりにくいはずなのに、自分がしっかりボールを受けてパスを出して、本当に良くやっていると思う」と感嘆する。

 それだけに、ブンデスリーガで成長したその一面を、今大会では存分に発揮し切れなかったことが、酒井自身は何より歯がゆかった。

「初戦のトルコ戦、チームの攻撃のリズムがなくなったときに下がり目からどう組み立てようか、と考えていたのは確か。でも、このチームに入ったばかりで、(周囲の選手に)何かを要求するようなことはしなくてもいいかな、と思ってしまった」

 エジプト戦では、攻撃だけでなく、守備の連係でもボランチ、サイドバックと若干噛み合わず、ピンチを招くシーンも見られた。とはいえ、実際にチームに入ってプレイしてみなければわからないことを、五輪本番前に経験し、吸収できたことは大きい。

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