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【名波浩の視点】
メダル獲得へ、五輪代表が短時間でこなすべきタスク (2ページ目)

  • photo by Yamazoe Toshio

 攻撃面は、どれだけ招集できるかわからないが、香川真司をはじめ、酒井高徳や宮市亮、宇佐美貴史など、欧州組が加われば、さらにレベルアップされるのは間違いない。そこで重要になるのは、リーダーの存在。GKの権田修一以外で、ピッチ上でゲームを作り、コントロールできる選手がほしい。バーレーン戦では、東がアクセントになって、攻撃を組み立てていたけれども、いつも東がやっているわけではないし、それは清武にしてもそう。その役割を担う選手が出てくるかどうかが、ひとつのカギになる。

 加えて、攻撃が手詰まりなとき、それも世界を相手にした場合は、南米の読みの良さや、欧州の組織力、アフリカの身体能力などで、簡単にボールを奪われるシーンが多くなる。その際、どうしても前線でボールを収めて時間を作らなければいけない。そうしたパターンの構築も必要不可欠だ。この点は、大迫勇也や大津祐樹しかり、その他、永井謙佑や杉本健勇ら、これまで招集されたFW陣の課題になるだろう。

 そして、最大のポイントは、融合性。オーバーエイジを含めて、新たな選手が加わってくる中で、どうすり合わせをして、どれだけコンビネーションを確立できるか、五輪本番に向けて、いちばんの焦点になる。そのためにも、時間のない中で、うまくコミュニケーションを取りながら、チーム作りを進めていってほしいと思う。オーバーエイジの選手などは、できるだけ早く決めて、合宿やテストマッチなどで多くの時間を過ごすことが大切だろう。

 さて、そのオーバーエイジだが、現状で思い浮かぶ選手は、闘莉王と長友佑都。闘莉王はスピード面が懸念されるものの、それ以外はすべてを兼ね備えた日本屈指のDF。チームが落ち込んだ場面でも、盛り立てられるリーダーシップがあるのも強み。長友の魅力は攻撃。彼の加入で、サイド攻撃の迫力は間違いなく増すだろうし、バリエーションも豊富になるはずだ。

 これからの2、3カ月で大迫が伸びてくれると信じているが、もうひとり加えるならば、いろんなことができるFW。A代表と同様、五輪代表も2列目にはいろんなイマジネーションを持った選手が多い。それだけに、ボールを収めるとか、突破の動きとかができるのは当然として、彼らを生かすような、スペースを空けてあげる動きなどをスムーズにできる選手がほしい。そうなると、前田遼一や李忠成あたりが候補になるのかもしれない。

 何はともあれ、このチームに期待するのは、メダル獲得。かつて、U-17、U-20と世界大会を経験したメンバーばかりで、最もメダルへの期待が高かった2000年のシドニー五輪は8強で止まった。彼らが果たせなかったことを、U-20W杯予選で敗れ、世界経験が乏しい五輪代表に果たしてほしい。それが、日本サッカーの新しい歴史になると思う。

著者プロフィール

  • 名波 浩

    名波 浩 (ななみ・ひろし)

    1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍

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